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自分のサイズで生きる [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.86

中山和彦 (東京慈恵会医科大学精神医学講座主任教授)

登録日: 2017-01-03

最終更新日: 2016-12-26

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個人情報や差別の問題は、医学では今に始まったことではなく、根強い課題です。日常的にも、特に体に表出している様々な特徴は、差別問題に発展しますので、なかなか言葉にできません。もちろん障害者の方々については、特に慎重に対応しなければなりません。

ある地方へ旅行した時のことでした。効率よく短時間でいろいろなところへ行く必要があったので贅沢ではありますが、ガイドの人をお願いしました。その人は待ち合わせの時間、ぴったりにホテルに現れました。正直ちょっとびっくりしました。紹介されたガイドは若い男性でした。でも身長は130cmもあったでしょうか。とても小さかったのです。いわゆる低身長、幼少時の成長ホルモンの分泌に問題があったものと思われました。もちろん、ガイドに支障があるわけではありません。むしろ彼はガイドのベテランであるとのことでした。

友人と合わせて3人でいろいろなところに行きました。目的地のひとつであった障害者の作業場に行った時、彼が小さい袋を3つ持ってきました。「これはここの人たちが作ったビスケットです。私からのプレゼントです」「え!(安いガイド料なのに)私が払います」「大した金額ではありません。私が買いたかったので、気にしないでください」。

その作業場はとても細かい織物を作ることで有名なところでした。作業に参加している人を見ると、一見、子どもたちばかりのようでした。とても身体の小さな人ばかりだったからです。しかし、子どもではなかったのです。ガイド君の話によると、「ここの織物は細工が細かく、大人の大きな手では編むことができません。私たちのように身体の小さな人に適しているのです。手先が細かいからできるのです。私は、私のサイズ、この身体のサイズが気に入っています」。

私は、ガイド君の「私のこのサイズが気に入っている」という言葉が耳から離れませんでした。「このサイズ」とは、ガイド君の生き方、考え方、すなわち、こころのサイズのことだと思います。たまたま体は小さく生まれたガイド君ですが、私には十分な大きさに見えました。そして、私もガイド君に負けず、自分のサイズでぶつかっていこうと思いました。

人が力を合わせると、そのサイズは無限に拡がります。この1年もそんな年にしたいですね。

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