新生児仮死に伴う低酸素性虚血性脳症は一定の頻度で発症する病態であり,周産期管理,新生児集中治療の進歩にもかかわらず,脳性麻痺の合併症に罹患する児はゼロにはならない。新生児予後の改善をめざして2007年からわが国にも新生児蘇生法が導入され,直近では15年秋に改訂ガイドラインが公表された。それによれば,(蘇生開始後ではなく)出生後,遅くとも60秒以内には必要とする児に対して人工呼吸を実施しなくてはならないことが明言されており,これまで以上に時間との闘いとなっている。
一方で,分娩に関連して発症した脳性麻痺の原因分析および再発防止などを目的に創設された産科医療補償制度における検証では,脳性麻痺児793例のうち,およそ1/4の188例が生後5分までに新生児蘇生処置を要さなかったが,その後の経過で異常が出現し脳性麻痺に至ったとされた1)。この中には早発型感染症に伴うショックのように発症を予測することが困難な症例も含まれているが,新生児蘇生法のアルゴリズムに従って実施するべき処置が実施できていなかった例も含まれていることが明らかになった。
これまで10万人近い周産期医療従事者が受講しているが,引き続き知識の更新および受講の必要性を啓発していくことが求められている。
【文献】
1) 日本医療機能評価機構:第6回 産科医療補償制度 再発防止に関する報告書─産科医療の質の向上に向けて. 2016.
【解説】
加藤丈典 名古屋市立大学新生児・小児医学講師