妊娠中の糖代謝異常には,妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM),妊娠中の明らかな糖尿病,糖尿病合併妊娠が含まれる。妊娠中,特に後半期にはインスリン抵抗性が増大する。耐糖能が正常の女性では,妊娠時のインスリン抵抗に打ち勝つだけのインスリン分泌が増加し,耐糖能はほぼ正常範囲に保たれる。しかし,インスリン抵抗性が強い場合や潜在的なインスリン分泌異常が存在する女性では,インスリン分泌の代償性増加が起こらず,血糖値の上昇をきたし,GDM として認識される。
耐糖能スクリーニングは全妊婦に対して,わが国では妊娠初期の随時血糖法(≧100mg/dLを陽性)と,妊娠中期の50gグルコースチャレンジテスト法(≧140mg/dLを陽性)あるいは随時血糖法の二段階で行われている。スクリーニング検査陽性妊婦には75g経口糖負荷試験を行う。口渇,多飲,多尿など高血糖に伴う症状や悪心,嘔吐,腹痛などケトーシスに伴う症状を認めたときは,劇症1型糖尿病を鑑別する。
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