1961年、英国・ブラックプール生まれの作家、スーザン・バーレイのデビュー作。大事な友人を失ったことで、残された者たちの生きる大切さを語っている(スーザン・バーレイ作・絵、小川仁央訳、評論社、1986年刊)
冬の長い日差しが差し込む午後の病室に、母親に連れられてきた2人の小学生がベッドサイドに座っていた。目の前のベッドには、彼らの小さい弟がたくさんの医療機器に囲まれて横たわっている。2人は、その弟の病状を医師から聞くために、連れてこられたのだ。
大先輩の後をついて訪室し、初めましての挨拶をすると、これから弟のことを話すのだけれども、この絵本を見ながら話をしよう、と読みはじめたのが『わすれられないおくりもの』だった。少し読み進めたところで、お母さんの膝で聞いていたお兄ちゃんが鼻血を出してしまい、重い空気が一掃された記憶がある。
絵本には、アナグマの死をイメージさせるやさしい描写があり、そのアナグマとの永遠の別れに森の仲間たちはとても悲しむものの、思い出とともに温かい気持ちになっていく様子が描かれている。子どもたちの豊かな想像力を発揮してもらえるように、絵本の言葉を借りて語りかけることで、幼い子どもなりの理解を促し、直面しているつらい状況をオブラートにくるむように伝えることができる。
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