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(6)小児インフルエンザの臨床検査 [特集:そこが知りたい! インフルエンザ検査]

No.4830 (2016年11月19日発行) P.52

河島尚志 (東京医科大学小児科学主任教授)

森地振一郎 (東京医科大学小児科学)

石和田稔彦 (千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野准教授)

登録日: 2016-11-18

最終更新日: 2016-11-15

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  • 小児のインフルエンザにおいて,一般的には白血球数の増加やCRPの著増は認めない。有熱時にインフルエンザ様症状を呈する小児での白血球数減少あるいは正常値は,インフルエンザが強く疑われる

    インフルエンザA(H1N1)pdm09では,急性期に絶対数,相対的%ともにリンパ球が減少する

    インフルエンザA(H1N1)pdm09肺炎の胸部X線所見としては,気管支血管周囲のすりガラス様陰影を伴う多病巣性浸潤影,びまん性浸潤影あるいは無気肺像が多い

    インフルエンザ脳症の重症例では,IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインの異常高値例を多数認める

    インフルエンザ脳症の予後不良因子として,①血小板数の減少(特に10万/μL以下),②AST/ALT/LDHの上昇,③血液凝固検査の異常,④血清クレアチニン(Cr)の上昇,がある

    1. 一般検査

    毎年流行する季節性インフルエンザウイルスは,気管・気管支・細気管支・気管支腺上皮細胞に感染する。一般的な臨床像は,38~39℃を超える発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・全身倦怠感などの全身症状や,咳嗽・鼻汁・咽頭痛などの上気道症状である。呼吸器症状が進行すると,肺炎へ移行して重度の咳嗽・呼吸困難・胸痛を伴う。
    しかし,インフルエンザは臨床像から他の病原体によるものと鑑別することは難しい。小児の症状は軽微なことも多く,抗ウイルス薬やワクチンの効果があることから,未診断例も多いとされている。一般的な血液検査では,白血球数は1万/μL以下が85%で,1万5000/μL以上になることは6~7%と稀である。細菌の二次感染を除き,白血球数の増加は認めないことが多い。
    CRPも,ほとんどの小児ではインフルエンザAおよびB型ともに低値である。4mg/dL以上の高値はA型で12%,B型で6%に認めるとされ,一般に2mg/dL以下である1)。赤沈は亢進しない。有熱時にインフルエンザ様症状を呈する小児での白血球数減少あるいは正常値は,インフルエンザが強く疑われる。生後3カ月以下のインフルエンザ感染患児を対象としたわが国の調査では,白血球数は7654±2320/μL,CRPは0.87±0.79mg/dLと炎症反応は一般に軽微で,AST 43.0±26.3IU/L,ALT 36.0±25.7IU/LとASTの有意な上昇を23%に認めたとされる2)
    各ウイルスの調査において,白血球数が4000/μL以下となるのは,インフルエンザA型で小児の8%であるが,インフルエンザB型では18%と有意に多くの低値例を認めた。また,白血球数が1万5000/μL以上になることも,AおよびB型ともに約7~8%で認めたとされる3)。インフルエンザB型感染小児(18歳以下)389例における,肺炎あり群となし群の臨床的検討では,あり群のほうが統計的に年齢は若く(5.3歳 vs. 6.6歳:中央値),白血球数(7500/μL vs. 5700/μL:中央値)およびCRP値(2.11mg/dL vs. 0.57mg/dL:中央値)が高い一方で,ヘモグロビンレベル(12.6g/dL vs. 13.2g/dL:中央値)は低かった。このため,白血球数増加やCRP高値,低ヘモグロビンを示すインフルエンザB型感染小児例では,肺炎を考慮すべきとされる4)
    季節性インフルエンザは肺胞上皮細胞には感染しにくく,肺炎へ移行するケースは少ないことから,白血球数増加やCRP高値は二次性の細菌性肺炎によるものが多いと推測される。また,ウイルス型の比較において,血清アミロイドAならびにCRPは,A型のほうがB型より有意に上昇する。

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