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精神科事前指示(PADs) 【患者本人が,同意判断能力が低下するか失われた際の治療について事前に決めておく】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.51

片桐直之 (東邦大学精神神経医学)

水野雅文 (東邦大学精神神経医学教授)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

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治療に際しての患者の自己決定権の尊重が重視される中,判断無能力の人のための意思決定にも,本人の価値観や利益が反映されることが求められる。
精神障害者においては,その精神症状のために一時的に同意判断能力が低下するか失われることがある。そこで,同意判断能力が保たれているときに,患者本人が,同意判断能力が低下するか失われた際の治療について指示する「精神科事前指示(psychiatric advance directives:PADs)」制度が知られている。米国では半数以上の州でPADsに関する法律が施行されているが,わが国ではこれまで実臨床での使用の報告はない。
当事者からみれば,将来自らが判断能力を失った際に自分に行われる医療行為への意向を前もって表明するもので,判断無能力になった場合に代理決定を行う人(代諾者)を指示(代理人指示)することと,治療内容に対する指示が検討される。
「具合が悪くて自分のことがうまく決められないときに,一緒に決めてほしい人や信頼できる人は?」「入院しなくてはならないときに,入院したい病院はどこか?」「入院したときに受けてもよい治療,受けたくない治療は?」などを紙面に記載していくが,本人の意見の聴取には主治医ではなく,日頃関わりがない精神保健福祉士などが望まれる。
PADsにおける問題点には,永続的に判断無能力になるわけではないことや,特定の主題に関する判断力の有無が問われることなど,が挙げられる。

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