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転移乳癌におけるリキッドバイオプシー診断 【CTCが血中に一定以上存在すると予後不良,薬効の予測などにctDNAの観測も有効】

No.4809 (2016年06月25日発行) P.50

岩瀬弘敬 (熊本大学乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-10-29

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乳癌は進行すると骨,肺,肝などの臓器に転移をきたす(転移乳癌)。この際の治療としては,ホルモン療法,分子標的療法,化学療法などの全身的薬物療法が主体となる。転移乳癌では,進行に伴い様々な遺伝子異常の蓄積があり,原発乳癌の遺伝子異常あるいは表現型の情報だけでは治療選択は困難である。しかし,転移巣の生検は時にアクセスが難しく侵襲的な場合があること,転移巣によって腫瘍の遺伝子異常が異なる場合があることなど,転移巣の検索にも限界がある。
一方,進行した担癌患者の血中には微量ながら循環腫瘍細胞(CTC)が認められることがあり,さらに血液や体液には腫瘍から遊離した断片化腫瘍DNA(ctDNA)が確認されている。また,がん細胞が分泌する細胞外小胞(エクソソーム)には様々なDNA,RNA,蛋白質などが含まれている。これら液性の因子の解析は,リキッドバイオプシーとして注目されている。
乳癌では,CTCが血中に一定以上存在していると予後不良であり,その予後予測効果は正確であるとされている(文献1)。また,エストロゲンレセプターの遺伝子であるESR1の点突然変異をctDNAとしてとらえることが,薬物療法の効果予測,治療のモニタリングとして重要であると報告(文献2)されている。近い将来にはリキッドバイオプシー情報で,再発乳癌の治療方針が決定される時代がやってくるであろう。

【文献】


1) Alix-Panabieres C, et al:Nat Rev Cancer. 2014;14(9):623-31.
2) Takeshita T, et al:Oncotarget. 2016 Apr 19. [Epub ahead of print]

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