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非浸潤性乳管癌(DCIS)の診療  【内分泌療法の適応はリスクとベネフィットを熟考の上,慎重に行うことが勧められる】

No.4802 (2016年05月07日発行) P.56

岩瀬弘敬 (熊本大学乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2016-05-07

最終更新日: 2016-10-26

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乳癌の自然史は,正常乳管上皮の増生から異型上皮過形成,非浸潤性乳管癌(DCIS)となり,浸潤性乳管癌に進行するとされている。画像診断や生検技術の発達によって,最近ではDCISの段階で発見される割合が増えている。
日本乳癌学会登録委員会によると,全乳癌の中で非浸潤癌の占める割合は,1990年では4.1%,2000年では6.2%,10年では10.5%と報告されている。DCISから浸潤癌へと進展するための生物学的変化は,細胞の生存,増殖に関連する因子に加え,周囲の筋上皮細胞の破綻や結合織の異常などが挙げられるが,明確ではない。
DCISは完全切除による局所療法のみで完治できるはずであるが,同側乳腺内再発および浸潤癌への進展が稀にみられる。その予測には,がん細胞の核異型度と病巣の壊死の有無による分類に,腫瘍サイズ,断端状況,年齢などを加えて評価したmodified Van Nuys indicatorが実用的である。
DCISに対する内分泌療法の有用性を検討した複数の臨床試験では,タモキシフェンもしくは閉経後にアロマターゼ阻害薬を用いることが,プラセボや無治療群に比べて同側乳癌発症リスクを低減させたとの報告がある。しかしながら,前者には子宮内膜に与える影響や発汗,ほてりなどのホルモン関連症状があり,後者には関節症状,骨折などのエストロゲン欠乏症状が認められることから,DCISの全身治療における内分泌療法の適応ではリスクとベネフィットを熟考し,現時点では慎重に行うことが勧められている。

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