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陰圧閉鎖療法の慢性期褥瘡治療への応用 【日常生活を送りながら使用できるコンパクトな陰圧創傷治療システム。高額のため使用患者の経済状況を加味することが必要】

No.4796 (2016年03月26日発行) P.48

永田茂樹 (昭和大学江東豊洲病院皮膚科准教授)

登録日: 2016-03-26

最終更新日: 2016-10-26

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局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は元来,難治性の慢性創傷の治療に用いられる方法であり,種々の方法がある(文献1)。2014年7月1日に入院・外来ともに保険適用になった単回使用陰圧創傷治療システム(PICOR創傷治療システム)は,ドレープ表面からフォームが吸収した滲出液を蒸散させるフォーム,ドレープ一体型のドレッシングによりキャニスターが不要になった。本体寸法が幅7.15cm×高さ6.37cm×奥行き2.1cmで,重量が50gと小さく,作動音もほとんどないため,日常生活を送りながら治療が行えるという利点があることから,在宅においての褥瘡治療にも使用できる可能性がある(文献2)。
使用上の注意点は,(1)高額になるので使用患者の経済状況を加味する必要がある,(2)ドレッシングの表面より吸引滲出液を蒸散させるので湿度や発汗量,おむつの蒸れ,尿漏れにより吸引滲出液蒸散量が左右されるため,ポートが褥瘡面より下にならない,ドレープ全体をおむつで覆わない点に留意してドレープ貼付方向を決定する,(3)褥瘡の壊死物質をできる限り除去してから使用を開始する,の3点である。すべての創傷治療において全身状態,栄養状態の改善は必須であるが,NPWTを用いることにより慢性期褥瘡の創床/創底環境調整を図ることができ,4週間以内に上皮化治癒できなくとも,その後の適切な局所療法により,速やかに治癒に導ける。

【文献】


1) 黒川正人, 他:褥瘡会誌. 2012;14(1):43-8.
2) 寺部雄太, 他:Geriatr Med. 2013;51(12):1301-5.

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