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糖尿病とフレイル

No.4761 (2015年07月25日発行) P.52

石木 学 (富山大学医学教育学教育准教授)

戸邉一之 (富山大学第一内科教授)

登録日: 2015-07-25

最終更新日: 2016-10-26

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frailtyとは,加齢による生理的予備能の低下により,身体的・精神的機能障害が進行し,要介護,死亡などに連鎖する状態を包括する用語であり,2014年に日本老年医学会より“フレイル”と和訳するステートメントが出された。糖尿病が強く疑われる者のうち,70歳以上の男性が24.4%,女性が17.6%を占めており,高齢糖尿病患者はますます増加している(平成25年「国民健康・栄養調査」,厚生労働省による)。
高齢糖尿病患者では,サルコペニアに代表される骨格筋量低下や筋力低下による運動不足,認知症によるダイエットや服薬管理の破綻,腎機能低下などがもたらす薬剤性低血糖に代表される副作用の易発現性,などによる血糖コントロールの悪化で,寿命がさらに短縮するリスクが高まる。一方,高血糖は合併症や認知症の発症を促進しフレイルが悪化するため,糖尿病とフレイルとの間には悪循環が生じやすい。
このように,高齢糖尿病患者への診療アプローチは,各々にフレイルのどの要素がどの程度関与しているかによって異なる。血糖コントロールに注視するとともに,フレイルの予防や改善を念頭に置いて,個々に応じた適切な治療法を選択することにより,患者が寿命を全うすることが重要である。
今後,フレイルの各要素を考慮した,背景の異なる高齢者に対する,効果的な糖尿病対策のエビデンスが報告されることが期待される(文献1)。

【文献】


1) Sinclair A, et al:Lancet. 2013;382(9902):1386-7.

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