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心腎貧血症候群の治療

No.4760 (2015年07月18日発行) P.55

竹田征治 (奈良県立医科大学第1内科)

斎藤能彦 (奈良県立医科大学第1内科教授)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2016-10-26

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心臓と腎臓は,血管を介して密接に関連しており,互いの臓器の予後に影響を与えることは以前から指摘されていることから,心腎連関という概念がRonco(文献1)によって提唱されている。心腎連関は,急性の心機能障害に伴う腎障害である1型,慢性心不全に伴う慢性の腎障害である2型,急性の腎障害に伴う急性心機能障害である3型,慢性腎臓病に伴う心血管障害である4型,全身性疾患に伴う心機能低下と腎障害である5型,の5群に分類される。心腎連関の機序はいまだ解明されていない点が多いが,レニン・アンジオテンシン系,活性酸素,炎症,交感神経が増悪因子として考えられ,これらをブロックすることが治療につながると考えられる。
また,心腎連関に加えて,貧血の存在も心不全の発症・進展に関わること,腎不全の増悪に寄与し,予後を明らかにさせることがわかってきた。Silverbergら(文献2)は,これら3者が関連する病態を心腎貧血症候群として報告した。貧血,心不全,腎障害は,単独よりも複数有する症例において死亡率が上昇することが明らかとなっており,貧血は相乗的に心腎連関の予後を悪化させることがわかっている。心不全における貧血治療のエビデンスは十分ではないが,エリスロポエチンと鉄剤による治療が心機能,自覚症状,入院日数を改善したとの報告もある。貧血を治療することで心不全,腎不全の悪化を抑制できる可能性があり,これら三者を意識した治療が重要である。

【文献】


1) Ronco C:Heart Fail Rev. 2011;16(6):509-17.
2) Silverberg DS, et al:Nephrol Dial Transplant. 2003;18(1):141-6.

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