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脂質管理とCKD

No.4729 (2014年12月13日発行) P.42

横尾 隆 (東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科教授)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-10-26

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2013年11月に米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)から,コレステロール管理に関するガイドラインが発表された。これは一定条件を満たす患者にはスタチンの使用開始を推奨するもので,LDL-Cの目標値は設定せず,またフォローアップの必要性もないとしている(文献1)。しかし,この条件を満たす人は,40~75歳の48.6%,CVD既往のない60~75歳の87%と,非常に多くの割合に及ぶことから,多くの専門家やメディアから批判的な声が相次いだ。
また,ACC/AHAガイドラインを受けて発表されたKDIGO(欧州・米国を中心とした腎臓の国際的ガイドラインをつくる組織)による脂質管理のガイドラインでも適応拡大の傾向が強く,透析患者以外のほとんどすべてのCKD患者にスタチンを推奨する内容となっているが(文献2),現在の強い批判を受けて早い時期に改訂される可能性がある。
一方,2013年に改訂された日本腎臓学会のガイドラインでは,上記ACC/AHAやKDIGOと一線を画し,CKDにおける脂質管理目標について一次予防でLDL-C 120mg/dL未満,二次予防で100mg/dL未満を推奨すると明記されている。さらに,蛋白尿減少や腎機能障害の進行抑制を目的としたスタチンの使用を推奨するという,一歩踏み込んだ内容となっている。エビデンスが少なく,同時に推奨されているエゼチミブが多剤を必要とする進行CKD患者の医療費負担の面で実際的ではないなど,問題を指摘する声も聞かれるが,現時点では規範するに十分かなった内容であると思われる。

【文献】


1) Stone NJ, et al:Circulation. 2014;129(25 Suppl 2):S1-S45.
2) Tonelli M, et al:Ann Intern Med. 2014;160(3):182.

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