1.対象と方法
大阪小児科医会が把握している小児が入院する病床を持つ大阪府の病院106施設。
2015年9月に対象機関の代表者に質問紙を郵送し、2週間以内に大阪小児科医会事務局宛てにファックスにて返送を求めた。返送数は69(返送率65.1%)、解析可能な回答数は67であった。回答施設の小児科病床数は平均24.0床であった。ただし小児科定床が0と回答した施設が10施設あった。
2.質問項目
2012 年 7 月〜 2015 年 6 月の3年間の①「保護者の養育力不足」の症例と②「虐待の後遺症」症例について、それぞれの経験の有無、経験症例数、ならびにその問題を解決するために良いと思うこと、被虐待児の養育環境問題の軽減のために可能な対策(自由記述)などの意見を求めた。
3.結果と考察(表1)
①と②を合わせた何らかの社会的入院があると回答した施設は31施設であった。
①「保護者の養育力不足」症例
症例の経験があるのは30施設、複数施設に入院した同一症例を含めて3年間に168名であった。
問題を解決するための方法として最も多かったのは「保護者支援」であり、「児童養護施設の増設」も半数を超えていた。「乳児院などの増設」「里親制度の推進」も3分の1以上であった。自由記述では「児を保護する法律や権限の整備」「地域支援ネットワーク」などが挙げられた。すなわち、回答者は地域での保護者支援の充実が重要と考えていた。
この入院に関して医療機関では、「児の安全管理に関する責任」「医療費の問題(手間に見合わない報酬/レセプト病名)」「入院治療の必要性が低い児が病床を占めることによる入院治療が必要な患者の病床不足」という問題が生じる。また日々成長する児にとっては、24時間医療機器の音が鳴り響く病棟は、生活の場としては適切ではないと考えられる。
②「虐待の後遺症」症例
経験症例数は3年間に29名であった。この問題を解決するための方法として最も多かったのは、「重症心身障害者施設の増設」であり、「病院におけるレスパイトの普及」と「その他の子どもを養育する機関を設立」が3分の1を超えていた。逆に「乳児院などの増設」「里親制度の推進」は少なかった。
また①の場合とは対照的に「保護者支援」の回答は少なく、虐待行為により一旦重篤な後遺症を持つに至った児の退院先に関しては保護者は不適切と考えていた。
この問題に対しては医療的ケアが可能な施設の増設が必要と考えられるが、医療的ケアが必要な児は重症心身障害者施設にしか入所できないのが現状である。後遺障害の重症度がきわめて高い児と比較的低い児とを分け、重症度が低い児の入れる新たな施設の開設が望まれる。