株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

地域レベルでの高血圧の実態・予防対策

No.4733 (2015年01月10日発行) P.56

岡田武夫 (大阪がん循環器病予防センター健康開発部部長)

登録日: 2015-01-10

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

私たちは,大阪府の行動変容推進事業の一環として高血圧対策に取り組んできましたので,大阪府の実態と予防対策について述べます。
平成23(2011)年患者調査では,大阪府の高血圧性疾患の受療率は531と全国(535)とほぼ同じです。虚血性心疾患の受療率は70で,全国(62)より高く,脳血管疾患の受療率も261で,全国(226)より高くなっています。よって,高血圧の受療率は全国平均に近いものの,虚血性心疾患や脳血管疾患を発症する人が多いと考えられます。
私たちが八尾市M地区で長年続けてきた調査のデータでは,虚血性心疾患発症者が持つ危険因子は,喫煙が圧倒的に多く,高血圧,高コレステロール血症,飲酒が上位です。同じ地域の脳卒中発症者が持つ危険因子は,高血圧が圧倒的に多く,高コレステロール血症,飲酒,喫煙が上位です。また,ある病院での調査によると,脳出血発症者では,高血圧で非服薬者,低コレステロール血症,大量飲酒,大量喫煙が関連要因として指摘されました。
平成23(2011)年度の大阪府の国民健康保険加入者の特定健診データでは,高血圧治療中でない男性の28%,女性の19%が健診時血圧が高血圧に該当し,治療中でない男性の7%,女性の4%,治療中の男性の9%,女性の8%が健診時血圧がⅡ度高血圧以上に該当していました。
八尾市M地区では,健診を継続的に受けている人で高血圧や糖尿病が少なく,脳卒中の発症も少ないことがわかっています。また,高血圧対策を実施した泉佐野市では,平成20(2008)年度と24(2012)年度の比較で,脳卒中の医療費が約4割,虚血性心疾患の医療費が約3割減少して,生活習慣病全体では医療費が約2割減少しました。
これらの状況から,血圧が高値の人に受診を勧奨し,血圧を適切に管理することで,循環器疾患の発症を予防することができると考えられます。そこで,次のような高血圧対策のプログラムを策定しました。
まず,健診時の血圧が高い人に,高血圧の危険性や生活上の注意などをまとめたリーフレットを受診者の状況に応じて配布し,生活指導を行います。特に血圧が高い人に対しては受診勧奨を積極的に行い,受診の確認を行って,未受診の場合はさらに受診を勧奨します。
なお,大阪府国民健康保険非肥満高血圧者保健指導推進事業として,特定保健指導の対象外となった非肥満被保険者のうち健診時血圧がⅡ度高血圧以上の人に対し,医療機関への受診勧奨および受診状況の確認を行うことで交付金が交付されます。
地域レベルの高血圧対策の第一は,健診を実態把握と健康指導の場として積極的に活用することです。八尾市M地区では住民が中心となり,市や私たちなどがバックアップして健診が行われています。大阪府も行動変容推進事業などで市町村をバックアップしています。高血圧対策には,地域住民と行政の双方の積極的な関与が重要であると考えます。
【回答者】
岡田武夫:大阪がん循環器病予防センター健康開発部 部長

【A】

私たちは,大阪府の行動変容推進事業の一環として高血圧対策に取り組んできましたので,大阪府の実態と予防対策について述べます。
平成23(2011)年患者調査では,大阪府の高血圧性疾患の受療率は531と全国(535)とほぼ同じです。虚血性心疾患の受療率は70で,全国(62)より高く,脳血管疾患の受療率も261で,全国(226)より高くなっています。よって,高血圧の受療率は全国平均に近いものの,虚血性心疾患や脳血管疾患を発症する人が多いと考えられます。
私たちが八尾市M地区で長年続けてきた調査のデータでは,虚血性心疾患発症者が持つ危険因子は,喫煙が圧倒的に多く,高血圧,高コレステロール血症,飲酒が上位です。同じ地域の脳卒中発症者が持つ危険因子は,高血圧が圧倒的に多く,高コレステロール血症,飲酒,喫煙が上位です。また,ある病院での調査によると,脳出血発症者では,高血圧で非服薬者,低コレステロール血症,大量飲酒,大量喫煙が関連要因として指摘されました。
平成23(2011)年度の大阪府の国民健康保険加入者の特定健診データでは,高血圧治療中でない男性の28%,女性の19%が健診時血圧が高血圧に該当し,治療中でない男性の7%,女性の4%,治療中の男性の9%,女性の8%が健診時血圧がⅡ度高血圧以上に該当していました。
八尾市M地区では,健診を継続的に受けている人で高血圧や糖尿病が少なく,脳卒中の発症も少ないことがわかっています。また,高血圧対策を実施した泉佐野市では,平成20(2008)年度と24(2012)年度の比較で,脳卒中の医療費が約4割,虚血性心疾患の医療費が約3割減少して,生活習慣病全体では医療費が約2割減少しました。
これらの状況から,血圧が高値の人に受診を勧奨し,血圧を適切に管理することで,循環器疾患の発症を予防することができると考えられます。そこで,次のような高血圧対策のプログラムを策定しました。
まず,健診時の血圧が高い人に,高血圧の危険性や生活上の注意などをまとめたリーフレットを受診者の状況に応じて配布し,生活指導を行います。特に血圧が高い人に対しては受診勧奨を積極的に行い,受診の確認を行って,未受診の場合はさらに受診を勧奨します。
なお,大阪府国民健康保険非肥満高血圧者保健指導推進事業として,特定保健指導の対象外となった非肥満被保険者のうち健診時血圧がⅡ度高血圧以上の人に対し,医療機関への受診勧奨および受診状況の確認を行うことで交付金が交付されます。
地域レベルの高血圧対策の第一は,健診を実態把握と健康指導の場として積極的に活用することです。八尾市M地区では住民が中心となり,市や私たちなどがバックアップして健診が行われています。大阪府も行動変容推進事業などで市町村をバックアップしています。高血圧対策には,地域住民と行政の双方の積極的な関与が重要であると考えます。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top