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MCGを用いた虚血性心疾患診断の有用性

No.4765 (2015年08月22日発行) P.57

川治徹真 (京都大学医学部附属病院循環器内科)

木村 剛 (京都大学大学院医学研究科 医学・医科学専攻循環器内科学教授)

登録日: 2015-08-22

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

マルチファンクションカーディオグラムTM(Multifunction CardioGram:MCG)は虚血性心疾患の診断に有用と言えますか。トレッドミル検査の代わりになるでしょうか。 (東京都 N)

【A】

これまでの報告で,MCGは目視での冠動脈狭窄の診断能が高いことが報告されていました(文献1,2)。しかしながら,筆者らが報告したMultifunction cardiogram Evaluation in Diagnosis of Functional coronary Ischemia sTudy(MED-FIT)の中では,冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)や定量的冠動脈造影法(quantitative coronary angiography)を加味した虚血性心疾患の診断能は鋭敏ではありませんでした(文献3)。
これまで報告されているトレッドミル検査や運動負荷心筋シンチグラフィーと比較しても,虚血性心疾患診断(冠動脈内圧測定による心筋虚血評価)に関してMCGは有用とは言えません。
本研究ではこれまでの報告通りMCGで測定されるseverity scoreのみを用いていますが,実際にはそれだけでなく解析レポートに添付されている参考情報などを加味したセッション分析を行うことができます。追加解析ではありますが,本研究のサブ解析では,冠動脈硬化の診断においてはセッション分析の感度が高いことを報告しました(文献4)。MCGは心臓全体としての負荷を測定しているため判読方法は非常に複雑ですが,非侵襲的に測定できるという利点があります。虚血性心疾患のスクリーニング診断能に関しては今後さらなる検討が必要と思われます。

【文献】


1) Weiss MB, et al:Heart Dis. 2002;4(1):2-12.
2) Grube E, et al:Int J Med Sci. 2007;4(5):249-63.
3) Kawaji T, et al:Ann Noninvasive Electrocardiol. 2015. [Epub ahead of print]
4) Kawaji T, et al:J Clin Therap Med. 2015;(1):57-61.

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