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基礎疾患のない尿ケトン陽性患者の解釈
【Q】
（1）糖尿病の基礎疾患がないのに，尿ケトンが陽性を示す場合はどのような病態が考えられますか。（2） 高蛋白食を摂取している患者に多いように思いますが，実際はどうなのでしょうか。
（3） 尿ケトン陽性が持続することは，体にとって有害ではないのでしょうか。 （大分県 O）
【A】
尿ケトンはアセト酢酸，アセトン，βヒドロキシ酪酸を総称していますが，試験紙法で検出されるのはアセト酢酸（5～10mg／dLが測定限界）です。（1）尿ケトン陽性の病態
ご質問にあるように，糖尿病患者をはじめとして甲状腺機能亢進症，飢餓，繰り返す嘔吐など，炭水化物の有効利用ができず，エネルギー源として脂肪を多用するような病態では尿ケトンが陽性となります。
また，試験紙法ではケトンとニトロプルシドナトリウムがアルカリ条件でイソニトロソ体を形成することを検出するため，SH基を含む薬剤，セフェム系抗菌薬，フェニルピルビン酸，高クレアチニン尿，L-DOPAなどで偽陽性となります。
薬剤などによる偽陽性の確認には尿を煮沸してアセト酢酸をアセトンと二酸化炭素に分解し，アセトンを揮発させることにより陰性化するかどうかで確認できます。
（2）高蛋白食と尿ケトンの関係
ご質問では，高蛋白食の摂取者に尿ケトンが多いとのことですが，巷で流行っているダイエットの中には糖質制限食ダイエットやMEC（meat， egg， cheese）食ダイエット，ケトジェニックダイエットがあります。糖質制限食は前述のようにケトン産生を高めますが，ケトジェニック食はさらに脂肪を負荷することでよりケトンを高めるものです（文献1） ので，尿ケトンが陽性となりえます。また，MEC食はその名の通り高蛋白食に加え糖質制限をするダイエットです（文献2） 。糖質制限をするために，このようなダイエットでも尿ケトンは陽性になる可能性があります。
（3）尿ケトンの有害性
3つ目のご質問の尿ケトンの毒性については，直接的な毒性はないと考えられていますが，原因疾患による全身に対するリスクはあります。また，前述のような極端なダイエットによるケトン陽性の場合には注意が必要です。肥満患者を対象とした糖質制限食の試験DIRECT試験のサブ解析（文献3）ではCKD stage 3でもeGFRが改善したことが示されていますが，高蛋白食となると腎機能低下例では腎機能をさらに悪化させる可能性が指摘されています（文献4）。
低炭水化物食の20年にわたる長期の追跡調査（文献5）では，動物性蛋白質と脂質の摂取が多い低炭水化物食群で，男女ともに死亡率が有意に上昇しました。逆に，植物性蛋白質と脂質の摂取が多い低炭水化物食群では，死亡率は有意に減少したという報告もあり，MEC食の安全性には疑問が呈されています。
ダイエット法の善悪は本主題から外れますので，読者の先生方のご判断にお任せしたいと思います。
【文献】
1） Prabhakar A， et al:Nutr J. 2015;14(1):41.
2） 最近見かけるようになったダイエット「MEC食」ってなに？[http://matome.naver.jp/odai/
2140939764752652001]（2015年6月30日現在）
3） Tirosh A， et al:Diabetes Care. 2013;36(8):2225-32.
4） Knight EL， et al:Ann Intern Med. 2003;138(6):460-7.
5） Fung TT， et al:Ann Intern Med. 2010;153(5):289-98.
