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熱い気持ちvs冷静な心 [プラタナス]

No.4777 (2015年11月14日発行) P.1

小島直樹 (公立昭和病院救命救急センター医長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-09

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  • もう10年以上前の症例であるが、いまだに賀状を通して近況を伝えあっている患者がいる。外傷による出血性ショックに対し緊急手術を行い、術後、外傷性DIC管理に難渋した記憶が今でも鮮明に残っている。最近の手紙にはゴルフの上達ぶりが記されており、ICUで闘病していた姿は微塵もない。

    当時の私は、救急医として専門医を取得しオーベン当直を始めたばかりであった。オーベン当直は、チームリーダーとして、3次救命救急センターに搬送される重症患者の初期対応、その後の集中治療管理の責任を一手に引き受ける。周りから見れば、どれほど頼りないリーダーだったか、たやすく想像できる。

    患者は自宅の庭木を剪定中、誤って木から墜落したが、当初バイタルサインは安定していた。初回迅速超音波検査で出血はなく、引き続いて造影CT検査(写真)でも肝周囲に少量の出血、軽度の肺挫傷を認めるのみであった。「大した外傷ではないようだ! よかった! 経過観察のため一晩だけICUで診よう!」とホッとしながらICUへ収容となった。



    ところが「せーの!」のかけ声でICUベッドに移した途端、猛烈に腹部を痛がり始め、みるみる血圧低下、超音波を当てると腹腔内出血の増加を認め、ポンピングをしながらでもギリギリ血圧80mmHg台維持という状態に陥った。患者も私も一気に蒼白である。

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