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遊離テストステロンとLOH症候群,糖尿病の関係

No.4708 (2014年07月19日発行) P.66

久末伸一 (順天堂大学医学部泌尿器科学講座准教授)

堀江重郎 (順天堂大学医学部泌尿器科学講座教授)

登録日: 2014-07-19

最終更新日: 2016-12-12

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【Q】

遊離テストステロンとLOH症候群,糖尿病の病態との関係について。 (青森県 W)

【A】

テストステロンは男性ホルモン(アンドロゲン)の中の主な構成成分である。男性らしさをつくるために働くことができる,つまりアンドロゲン受容体と結合できるテストステロンは限られている。循環テストステロンの構成は図1に示す通りである。このうち,男性ホルモンとしての働きを持つ生物学的活性テストステロンは,SHBG結合テストステロンを除いた遊離テストステロンとアルブミン結合テストステロンになる。
(1)LOH症候群との関係
わが国においては,遊離テストステロンの年齢別の基準値についての報告をもとに,血中遊離テストステロン値8.5pg/mLがLOH症候群に対して治療介入を行う基準値としている(文献1)。
国際的には総テストステロンかSHBGの測定・計算による生物学的活性テストステロンを基準にすることが主であるが,わが国ではあまり行われていない。これは,コーカソイドでは血中総テストステロンが加齢に伴い減少していくのに対して,日本人では総テストステロン値は変化せずに,遊離テストステロンが低下すること(図2),またわが国でSHBGの測定,総テストステロンと遊離テストステロンの同時算定が保険診療で認められていないことが原因となっている(文献1)。
海外では総テストステロン値とLOH症状の有意な相関をみた大規模な報告(文献2) が存在するが,わが国では放射免疫測定(RIA)法で測定可能な遊離テストステロンとLOH症状との相関についてはいくつか検討がなされているものの,いまだに有意な相関関係を示した報告はない(文献3)。この理由としてテストステロンの基準値の個人差が大きいこと,また,テストステロン変化のほうが横断的なテストステロンの絶対値よりも症状との相関を認めることが考えられている(文献4)。テストステロン投与により遊離テストステロン上昇とLOH症状の改善を認めた報告(文献5) は存在するが,今後,遊離テストステロンとLOH症状の相関についての大規模な検討が待たれる。
(2)糖尿病との関係
加齢男性でのテストステロン減少は,抑うつ状態,性機能低下,認知機能の低下,骨粗鬆症,心血管疾患,内臓脂肪の増加,インスリン抵抗性の悪化,HDLの低下,コレステロール値とLDLの上昇に寄与し,メタボリックシンドロームの危険因子となることが知られている(文献1)。2型糖尿病患者に対するテストステロン補充療法ではHbA1c,総コレステロール,ウエスト周囲径において有為な改善を認めている(文献6)。また,糖尿病に関しては2013年の欧州糖尿病学会での発表で,スウェーデンGothenburg大学のBledar Daka氏らが,男性2型糖尿病患者では,テストステロン値が高いほど,急性心筋梗塞発症リスクが低かったと報告している。以上より今後,糖尿病のリスクやコントロールにテストステロンが重要な役割を担うものと考えられる。


【文献】


1) 日本泌尿器科学会, 他 編:LOH症候群 加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引き. じほう, 2007, p4-16.
2) Wu FC, et al:N Engl J Med. 2010;363(2):123-35.
3) Miwa Y, et al:J Sex Med. 2006;3(4):723-6.
4) Holm AC, et al:Aging Male. 2011;14(4):249-56.
5) Amano T, et al:Aging Male. 2010;13(4):242-6.
6) Hackett G, et al:J Sex Med. 2014;11(3):840-56.
7) 岩本晃明, 他:日泌会誌. 2004:95(6);751-60.

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