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潰瘍に透かして見えた患者背景 [プラタナス]

No.4747 (2015年04月18日発行) P.3

井階友貴 (福井大学医学部地域プライマリケア講座講師 高浜町国民健康保険和田診療所)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • Mさんは、10年前に事故で第12胸髄を損傷し、両下肢完全麻痺となった65歳の男性である。終日車椅子で過ごす不便な生活を続けているが、諸々の事情で家族は愛犬のみだった。日中ずっと坐位で過ごし、筋肉を収縮させることができないため、下肢の循環が悪く、慢性的にひどいむくみがあった。

    あるとき、右外踝に皮膚潰瘍が発生した。通常なら数日から1~2週間で治るような小さな潰瘍だったが、なかなか寛解せず、増悪と軽快を繰り返した。


    その間、Mさんは、ただでさえ不便の多い生活の上に、毎日の処置や頻回の受診、特殊な入浴方法など、さらに不便を強いられることとなってしまった。様々な処置や投薬を検討するも寛解しない潰瘍に、Mさんだけでなく私も悩まされていた。気がつけば2年が過ぎようとしていた。

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