筆者は、これまでにも当欄に何度かヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)ワクチンに関する意見を掲載(No.5156、No.5177)させて頂いたが、今回あえてこのタイミングで再度テーマに選ばせて頂いた。その理由は、国内においてワクチンの積極的接種勧奨の差し控えがなされていた2013年6月〜2022年3月までの約9年間に、HPVワクチンの接種機会を逃した平成9〜19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日〜2008年4月1日)の女性に対するキャッチアップ接種の終了時期が2025年3月に控えているためである。
キャッチアップ接種対象世代の女性に対して、国内で主に使用されている9価HPV(HPV9)ワクチンを用いて実際の接種を行った場合の総接種回数は3回となり、接種完了までは通常半年を要する(理論上、最短で接種した場合でも4カ月を要する)。したがって、今夏に初回接種を開始しないと、無料で接種できるキャッチアップ接種の終了時期である2025年3月までに接種を完了することが困難となり、以後の接種は自費で接種することとなる。また、学業や就業で多忙な日々を送っているキャッチアップ接種対象世代の若年女性にとっては、これから迎える夏休み期間がHPVワクチン接種を開始する最後のチャンスとも言える。実際、以前も紹介した通り(No.5213)、日本小児科学会神奈川県地方会および神奈川県産婦人科医会の調査によると、HPVワクチンの月別接種件数は、夏休みである8月に増加している1)。
夏休みを直前に控えたいま、ぜひキャッチアップ接種対象世代の女性に対してHPVワクチンの推奨をして頂きたい。
【文献】
1)日本小児科学会神奈川県地方会感染症小委員会, 他:神奈川県HPVワクチン接種状況.
https://kanagawa-hpvgraph.azurewebsites.net/
勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[HPVワクチン][キャッチアップ接種]