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【識者の眼】「日本のギャンブル事情─日本初のカジノ・大阪で開業」松﨑尊信

No.5223 (2024年06月01日発行) P.63

松﨑尊信 (国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)

登録日: 2024-05-20

最終更新日: 2024-05-20

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大阪IRとカジノ

いよいよ2025年に約半世紀ぶりとなる国際博覧会が大阪において開催されます。会場は大阪・夢洲ですが、その隣接地の咲洲において、2030年秋頃に日本初のカジノ施設を含む、会議場、ホテルなど観光振興に寄与する施設が一体となった特定複合観光施設(integrated resort:IR)の開設が予定されています。このIR計画が動き出したのは、政府によって2016年特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律、続いて2018年カジノを含む統合型リゾート実施法が制定されたことによります。これに基づいて2023年4月、国が大阪のIR事業を初めて認定しました。

日本におけるギャンブル事情

日本では、刑法で賭博(偶然の勝負に関して財物の得喪を争うこと)に関して次のように規定しています。

第185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

第186条 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

このように賭博は日本で禁止されています。しかし、競馬・競艇・競輪・オートレースのいわゆる公営ギャンブルは、それぞれに監督省庁が存在し、公的な利益のため開催が許可されています。たとえば、1923年に成立・施行された競馬法は、馬の改良増殖その他畜産振興と地方財政の改善を目的として、日本中央競馬会と都道府県、指定市町村に競馬の施行、馬券の発売を認めています。パチンコ・パチスロも一般にはギャンブルと解釈されがちですが、法的にはギャンブルではなく、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律によって遊技として規制されています。

普段ギャンブルに馴染みがなかったり、あまり関心がなかったりすると、ギャンブルの本質を理解するのがとてもむずかしいでしょう。しかし、最近明らかになった米国での違法スポーツ賭博による巨額横領事件をみてもわかるように、ギャンブルは経済的な問題を引き起こすだけでなく、個人の信用を著しく失い、周囲の人まで巻き込んでしまう切実な問題となりうるのです。今後、日本で開業予定のカジノは、経済的な利益をもたらすというメリット以外に、ギャンブル依存症者の増加といった負の側面も指摘されています。ギャンブルが社会に存在する限り、ギャンブル依存症のリスクを完全にゼロにするのはむずかしいですが、予防策を徹底し、限りなくゼロに近づけることは社会の責任です。

国は健全なカジノ事業を実現するために様々な対策、たとえば、依存を防止するために、7日間で3回、28日間で10回という入場等回数の制限、1回6000円の入場料賦課などの入場規制を実施する予定です1)。効果的なギャンブル依存症対策を国に要望するとともに、私たち医療側に立つ精神科医療も、万一のリスクに備えた相談・治療の受け皿として準備を怠らないようにしていきたいと思います。

【文献】

1)カジノ管理委員会公式サイト:カジノ規制について.
https://www.jcrc.go.jp/policy/regulatory/index.html

松﨑尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)[ギャンブル][ギャンブル依存症][公営ギャンブル][IR][カジノ]

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