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【識者の眼】「大規模災害と感染制御③─大規模災害時に不足する感染制御要員」櫻井 滋

No.5209 (2024年02月24日発行) P.60

櫻井 滋 (東八幡平病院危機管理担当顧問、日本環境感染学会災害時感染制御検討委員会 副委員長)

登録日: 2024-02-09

最終更新日: 2024-02-09

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これまで本連載で記してきたように、日本環境感染学会(JSIPC)は2020年1月に大型クルーズ船内で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染例に対応するため、厚生労働省の依頼を受けて同船内にDICTチームを派遣し、船内での感染制御の支援活動を行った。派遣されたのは櫻井滋感染制御医(ICD)(岩手医大)、泉川公一ICD(長崎大)、菅原えりさ感染制御看護師(ICN)(東京保健医療大)ほかである。その際、感染制御の一環として、乗船客のみにとどまらず、乗務員への感染拡大状況を指摘し、検疫終了後の速やかな全員下船を提案した。また神奈川県JMATに対する乗船時の感染対策に関する実技指導を担当するなど、積極的提言や支援を行った。クルーズ船のほかにも、北海道地方で発生した医療機関における大規模なCOVID-19クラスターに対する感染制御支援にもDICTメンバーの菅原ICN、近藤啓子ICN(岩手医大附属病院)を派遣した。

大規模災害時、生活基盤が広範囲に損なわれる状況では、物的被害規模とは別に多数の被災者が避難所等の避難施設での集団生活を強いられる状況が突然出現する。実際に近年の大規模自然災害、たとえば東日本大震災における事後の聞き取り調査1)によれば、保健所職員自身も被災者となったうえに、市町村職員は感染制御以外の公衆衛生業務(被災世帯の安否確認や健康状態の把握など)の対応にあたる必要度が増大し、感染制御活動を担う要員の不足が課題となった。

仮に東日本大震災規模の被災地で必要とされる保健師を他都道府県からの派遣で補うならば、被災していない自治体のすべての保健師を1年間派遣する必要があるとする推計2)もある。これらの状況は保健所等による指揮調整機能の障害というよりは、避難所など現場の担い手が絶対的に不足していたこと、さらに市町村の保健師は、必ずしも感染症の専門家ではないことも理由である。このことは、今般の災害でも大きく改善しているとは考えにくいのが筆者の感想である。(続く)

【文献】

1)櫻井 滋, 他:平成23年度厚生労働科学研究費補助金「被災地における感染制御支援に関する調査」(H23-特別-指定-008)分担研究報告書「いわて災害時感染制御支援チームが東日本大震災で用いた、避難所における感染症サーベイランスシステムの実施結果等に関するヒアリング調査」.

2)坂元 昇:平成25年度厚生労働省保健師活動領域調査(領域調査)「全国の自治体等による東日本大震災被災地への保健医療福祉支援実態報告書」. 日本公衆衛生協会, 2012年3月.

櫻井 滋(東八幡平病院危機管理担当顧問、日本環境感染学会災害時感染制御検討委員会 副委員長)[被災地の感染制御支援]

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