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【識者の眼】「妊婦へのワクチン接種」勝田友博

No.5206 (2024年02月03日発行) P.59

勝田友博 (聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)

登録日: 2024-01-17

最終更新日: 2024-01-17

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RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)は特に新生児や乳児が罹患した場合の重症化が危惧されるウイルスである。厚生労働省の専門家部会は2023年11月27日に、妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSVを原因とする下気道疾患の予防を目的とした、組換え2価融合前Fタンパク質抗原含有RSウイルスワクチン(アブリスボ筋注用)の国内における使用を了承した。同ワクチンの重症下気道感染症予防効果は生後3カ月、6カ月時点でそれぞれ81.8%、69.4%と報告されている1)。米国においては、既に2023年8月から実際の接種が開始されており、国内においても今後、正式承認がなされる見通しである。

妊婦への接種が推奨されているワクチンには、RSVワクチン以外に、インフルエンザワクチン、百日咳含有ワクチン、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)ワクチンなどが挙げられるが、有効性や安全性が確認されている場合であっても、妊婦は胎児への影響を懸念し、実際の接種を躊躇することが多い。実際、2023年12月時点における米国の妊婦へのRSVワクチンの接種率は7.4%にとどまっている2)。さらにわが国は、欧米と比較し、妊婦ワクチンを忌避する傾向があり、実際の接種率も低いことが知られていることから3)、RSVワクチンにおいても接種率の低迷が危惧される。

ワクチン忌避を回避するためには、医療従事者が正確な情報に基づく継続的な啓発をする必要があることは言うまでもない。一方で、RSVワクチンを含む新規導入ワクチンに関しては、稀な有害事象の見落とし、特定の被接種者におけるリスク、遅れて出現する有害事象など、承認直後における安全性情報の不足が指摘されることが多い。米国においては、そのような懸念に対し、能動的な有害事象調査がワクチン承認後も継続的に行われているが、わが国においては同様の調査体制がないため、欧米からのエビデンスに依存せざるをえない(No.5156を参照)。

妊婦へのワクチン接種に対する忌避はごく自然な感情であり、個人的には十分理解できる。一方で、新生児、乳児におけるRSV感染症は多くの小児科医が最も懸念している感染症の1つである。「妊婦や胎児への安全性を懸念したRSVワクチン接種回避」という判断は、「新生児や乳児における重症RSV感染症の増加」という別リスクを伴うため、わが国の医療従事者は、欧米からの最新の情報を注視しつつ、適切な接種啓発を継続する責務がある。さらに、国内における能動的な予防接種有害事象監視システムの設立は、国内予防接種システムにおける積年の課題である。

【文献】

1)Kampmann B, et al:N Engl J Med. 2023;388(16):1451-64.

2)Centers for Disease Control and Prevention公式サイト:Respiratory Syncytial Virus(RSV) Vaccination Coverage, Pregnant Persons, United States. 2023.
https://www.cdc.gov/vaccines/imz-managers/coverage/rsvvaxview/pregnant-persons-coverage-intent.html

3)Kurasawa K: J Obstet Gynaecol Res. 2023;49(2):493-509.

勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)RSV能動的な予防接種有害事象監視システム

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