株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

新生児遷延性肺高血圧症[私の治療]

No.5204 (2024年01月20日発行) P.40

向井丈雄 (東京大学医学部附属病院小児科)

登録日: 2024-01-23

最終更新日: 2024-01-16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn:PPHN)は,様々な要因により出生後に肺血管抵抗が低下せず,胎児期の肺高血圧状態が続く病態である。PPHNの発症率は,1000人の出生に対し1.9人と推定されている1)。遷延する肺高血圧により心房間交通もしくは動脈管を介した右→左短絡を呈し,それが続くことで全身の低酸素血症をきたす。
    原因として胎便吸引症候群,呼吸窮迫症候群,重症新生児仮死,先天性横隔膜ヘルニア,先天性感染症,早産児における長期破水や慢性早剝羊水過少症候群などがある。また,母体の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用により,動脈管または卵円孔の早期閉鎖が起こりPPHNを呈することがある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    適切な人工呼吸管理下で100%酸素吸入でも全身の低酸素血症を呈し,心房間交通もしくは動脈管を介した右→左短絡を呈し,SpO2の上下肢差を呈することが多い。

    【検査所見】

    心臓超音波検査で,チアノーゼ性先天性心疾患が否定され,三尖弁逆流,心房間交通もしくは動脈管を介した右→左短絡を呈する。右心室が張っており,短軸像では右心室に圧排された左心室がD-shapeを呈する。肺高血圧による右→左短絡で静脈血が全身に流れるため,SpO2の上下肢差を呈する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    PPHNと診断した場合,適切な人工呼吸管理設定を行い,心臓超音波検査での肺高血圧の程度を評価しながらSpO2を上下肢でみて酸素投与を行う。体動や啼泣が肺高血圧の増悪因子となりうるため,適宜必要な鎮静,筋弛緩管理を行う。また,体血圧の維持のためvolume負荷や昇圧薬を投与する。

    100%酸素吸入下でもPPHNが改善せずSpO2が維持できない場合,一酸化窒素吸入療法(iNO)を行う。また,原疾患そのものの治療とアシドーシスや電解質異常などの補正が不可欠である。

    残り1,716文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top