株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「特別支援教育の現状と合理的配慮」小橋孝介

No.5198 (2023年12月09日発行) P.60

小橋孝介 (鴨川市立国保病院病院長)

登録日: 2023-11-22

最終更新日: 2023-11-22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年度の統計によると、義務教育段階の全児童生徒の5.6%(961万人)が特別支援学校および小・中学校の特別支援学級や通級による指導を受けている。特に小・中学校の特別支援学級や通級による指導を利用している子どもの数は過去10年で2倍に増加した。また、22年に発表された「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」によると、義務教育段階の全児童生徒の8.8%が通常級において特別な支援を要すると報告されており、合わせると14.4%、およそ7人に1人が何らかの特別支援教育を要するということになる。

現在の日本の教育制度では、16年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」によって、「障害のある児童生徒等の性別、年齢および障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮」、いわゆる合理的配慮の提供が公立学校に義務づけられた。この合理的配慮のプロセスは、子ども本人や保護者の求めに応じてスタートし、学校の担任や特別支援教育コーディネーターと対話、調整を経て個別の教育支援計画および個別の指導計画を作成し、実際の合理的配慮が提供されることになる。これは特別支援級に限らず、普通級に在籍していても、何らかの合理的配慮が必要と思われる場合には、個別の教育支援計画や指導計画を作成してもらい合理的配慮を受けることが可能である。

学校は行けばいいという場所ではない。その場所で、子どもが学び育つのである。いかにその子どもにとって学びやすい、育ちやすい環境をつくっていけるのかが、子どもの将来に大きく影響してくる。子どもの主治医や学校医として関わる医療者は、子どもたちの特性に合わせ、必要な合理的配慮につながるよう、保護者や学校へ積極的に助言していくべきである。

障害者差別解消法の改正により、24年4月からは今まで努力義務だった私立の学校においても合理的配慮が義務化される。すべての学校において、一人ひとりの子どもに合った環境づくりが行われていくことを願っている。

なお、合理的配慮の具体的事例については、国立特別支援教育総合研究所の作成するインクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)が参考になる。

小橋孝介(鴨川市立国保病院病院長)[特別支援教育][合理的配慮][子ども家庭福祉]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top