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【識者の眼】「入院基本料アップの願い」邉見公雄

No.5192 (2023年10月28日発行) P.59

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2023-10-06

最終更新日: 2023-10-06

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来年4月のトリプル改定、つまり診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の値つけ、公定価格の決定の議論が山場に差し掛かっている。12月にほぼ決定、後は細目に亘って厚生労働省の担当部局が決める。今回は2年ごとの診療報酬、3年ごとの介護報酬が6年振りに同時に改定される重要な改定である。超高齢社会と支え手の現役が減り始め衰退途上国と評価されるわが国の財政では、過去はデフレでもあり、マイナス改定の連続であった。昨今の原油高などによる光熱費の高騰、ロシアのウクライナ侵略による食糧や食用油の値上がり。看護師の処遇改善に伴う人件費増。チーム医療で30以上の国家資格者の処遇は看護師だけでは不公平。不満の声を減らさないと不協和音が大きくなる。診療報酬でやって欲しかったが、「動機良く、結果罪作り」の施策だった。それにコロナパンデミックによりセルフメディケーションが進み、風邪など感染症を中心に外来患者減。これは良い事ではあるが、色々な面で病院の収支は大変である。

また、地球沸騰化により線状降水帯の水害なども激増、災害拠点病院などは改築にも経費が必要である。地域医療構想に沿った病院統合の兵庫県の病院は建設費高騰により入札不応が2回あり、3回目にやっと入札成立。どの病院も新鋭機器の導入を躊躇する昨今である。

さらに医療DXによる新しい投資も必要になりそう。病院に対するサイバー攻撃はメディアが報じている数倍はあるとも。その為、公立病院の地方厚生局の監査ではサイバー対策も対象で、病院のBCPの一環と。その人材確保には他産業以上の報酬が必要である。これらを解決するにはハイリスク・ローリターンの入院基本料のアップ以外に方策はない。

あれやこれや物入りであるが、国の財政制度等審議会は旧い資本主義時代と同様にプラス改定にお墨つきを出していない。岸田首相の言う新しい資本主義は、確か医療・介護、保育・教育、つまり人への投資から始まる様にとらえていたのだが……。

もし公定価格のアップが認められないのであれば、我々病院団体は患者さんと職員を守る為に決断を求められるかもしれない。先日、61年振りにストライキをした池袋の有名な百貨店の様なことは医療人としては無理かもしれないが、現厚生労働大臣の父上がやった事なら部分的には可能ではないかと? そうならない事を願いながらの執筆である。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[トリプル改定][物価・人件費の高騰]

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