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【識者の眼】「在宅医療・ケア提供者の安全を確保するためのワーキンググループ(前半)」小豆畑丈夫

No.5173 (2023年06月17日発行) P.65

小豆畑丈夫 (青燈会小豆畑病院理事長・病院長)

登録日: 2023-06-08

最終更新日: 2023-06-08

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2022年1月埼玉県ふじみ野市において、訪問診療を行っている医師が患者家族に射殺されるという痛ましい事件がおきた。在宅医療に関わる私たちはこの事件を重く受け止め、決して許容してはいけないと考える。この事件を乗り越え、これからも質の高い在宅医療を提供していくためには、在宅医療・ケア提供者の安全を確保することが大切である。

同年8月から、在宅医療に関わる医師や医療・介護スタッフが会員となっている一般社団法人全国在宅療養支援医協会と一般社団法人日本在宅救急医学会が、合同で「在宅医療・ケア提供者の安全を確保するための合同ワーキンググループ(以下、WG)」を立ち上げ、活動を開始した。WGの設立の趣意書が23年5月29日に確定した(今後、日本在宅救急医学会HPなどで公開予定)ので、全2回にわけて紹介したい。前半は趣意書の中で、私たちが考える在宅医療の特性とそれに伴う課題についてである。

【在宅医療の特性とそれに伴う課題】

1. 在宅医療・ケア提供者は、利用者の生活と療養の全体を支えることを使命としている

(課題)在宅医療の現場では、より良い療養方針選択のために、在宅医療・ケア提供者は利用者の生活や死生観、経済事情など、私的な情報をも共有する特徴があります。対等で深い対話が可能になる一方で、それぞれに利己的な要望を抱く可能性があります。

2. 在宅医療・ケアの場は、利用者宅などの私的な空間であり、時に密室となる

(課題)第3者の介入が乏しく、私的な空間である利用者宅などでは、有事の際に、救援の要請、退路の確保、証拠の保全が困難となる場合が通常です。

3. 在宅医療・ケア提供者は、その利用者の看取りまで、責任をもって関わり続ける

(課題)在宅医療・ケア提供者は、疾病等により社会参画が難しくなった利用者が、社会から孤立せず暮らしていけるように支援するための最後の砦としての役割を担います。在宅医療・ケア提供者は、利用者との間にトラブルが発生しても、容易に支援を止めず対話による歩み寄りを続ける傾向があります。その結果として、不本意にも問題が深刻化する恐れがあります。


次回の後半では、これらの課題を認識した上で、WGが考える、在宅医療・ケア提供者の安全を確保するために検討すべき方針についてお話ししたい。

小豆畑丈夫(青燈会小豆畑病院理事長・病院長)[医療と制度②]

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