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特集:フレイル・サルコペニアを考慮した高齢者の肥満症対策

No.5169 (2023年05月20日発行) P.18

竹本 稔 (国際医療福祉大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学教授)

登録日: 2023-05-19

最終更新日: 2023-05-18

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新潟市生まれ。富山医科薬科大学医学部卒業。新潟大学にて博士号取得後,スウェーデンで6年間の研究留学。帰国後は千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学准教授を経て,2017年から現職。

1 肥満・肥満症とは
・体格指数(BMI,kg/m2)≧25のものを肥満と定義する。
・肥満と肥満症は区別される。
・腹部CT検査などによって内臓脂肪面積≧100cm2が測定されれば,内臓脂肪蓄積型肥満と診断する。

2 高齢者の肥満・肥満症
・わが国の高齢者(65歳以上)の総人口に占める割合は29.1%(2022年9月)であり,今後も増加の一途をたどる。
・高齢者の肥満の評価には,若年者同様にBMIが用いられる。
・高齢者には,BMIが肥満の基準を超えなくとも内臓脂肪の蓄積が観察される肥満(サルコペニア肥満)が存在することに,注意を要する。
・加齢とともに基礎代謝が低下することや,身体活動量の低下は,高齢者の肥満の原因のひとつである。

3 高齢者の肥満・肥満症の特徴
・高齢者では除脂肪量が失われ,内臓脂肪が蓄積しやすい。
・加齢に伴う内分泌的変化も肥満を助長する。
・高齢者の肥満と心血管病発症との関連は明らかではないが,日常生活活動度(ADL)の低下や転倒のリスクとなる。

4 フレイル・サルコペニアとは
・身体的フレイルには,筋肉量が減少し,筋力や身体機能が低下している状態であるサルコペニアが深く関与する。
・フレイルの診断には統一された基準はないが,Friedが提唱した表現型モデル(phenotype model)に基づくCardiovascular Health Study(CHS)基準と,欠損累積モデル(accumulated deficit model)に基づくfrailty indexが主に使われる。

5 サルコペニア肥満
・サルコペニアと肥満を併発したものはサルコペニア肥満とされるが,その定義にはまだ定まったものがない。
・高齢者のサルコペニア肥満は,身体機能の低下や転倒,骨折に関与する。また,死亡リスクとも関連する。

6 高齢者肥満症の治療
・日本老年医学会から「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」が発表されている。
・日本肥満学会が発表した「肥満症診療ガイドライン2022」に初めて「高齢者」の章が追加された。
・高齢者肥満症患者のうち,減量治療が必要な高齢者を適切に選び出す必要がある。
・高齢者肥満症患者の個々のリスクとベネフィットを考慮して,減量のための食事療法を行うことが推奨されている。
・食事療法に運動療法を併用すると,減量効果が大きい。
・高齢者肥満症に有効な薬物療法はまだ確立されていない。
・高齢者高度肥満症患者に対する減量・代謝改善手術の安全性と有効性が検証されている。

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