SUMMARY
ヘルスケアシステムの中でプライマリ・ケア機能が発揮されると,地域内や地域間における健康格差が縮まる可能性が示されている。評価はまだ不足している。現場で見えたことを評価し,エビデンスとして発信する力をつけるために公衆衛生の学びを。
KEYWORD
ヘルスケアシステムにおけるプライマリ・ケア
プライマリ・ケア機能がヘルスケアシステムの中でうまく機能した場合に現れる影響, インパクトについて検討, 検証することを示す言葉。
PROFILE
一橋大学社会学部卒,長崎大学医学部医学科卒。沖縄県立中部病院での研修,離島でのソロプラクティス等を経てプライマリ・ケア,公衆衛生の実践,研究を行う。公衆衛生学修士・博士(ロンドン大学,千葉大学)日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。
POLICY・座右の銘
早く行きたいなら一人で行け,遠くへ行きたいならみんなで行け
実際にプライマリ・ケアの実践が健康格差を縮小してきたのか,主に最近のエビデンスを見てみよう(表1)。
前編(No.5142)の最後に示したプライマリ・ケアの評価の視点,ACCCA(近接性・包括性・協調性・継続性・責任性)の考えに基づき評価を行った先行研究では,一貫して,都市か農村か,地域レベルの貧困率,教育歴,生活習慣(喫煙や肥満率など)の割合などを調整しても,人口当たりのプライマリ・ケア医の比率が高い地域ほど年齢調整死亡率やがん・心血管疾患による死亡率が低く,平均寿命が長いことが示されている1)2)。医療費についても,人口に対するプライマリ・ケア医の比率が高い地域ほど,米国のメディケアを利用している高齢者の医療費が低いことが明らかになっている3)。