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【識者の眼】「盛り上がる『フェムテック産業』について思うこと」重見大介

No.5143 (2022年11月19日発行) P.62

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2022-10-25

最終更新日: 2022-10-25

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フェムテックとは女性(female)と技術(technology)を組み合わせた造語であり、2020年頃からわが国でも主に産業界で注目を集めているワード・領域です。もともとは「女性の健康課題を解決するためのテクノロジー」を意味しており、かなり医療に直結しうるものでしたが、最近の業界を眺めているとわが国では「女性に関するあらゆる商品・サービス」が混在しており、テクノロジーにほとんど無関係だったり医学的根拠に乏しいものだったりも増えていて、その質と勢いに懸念を抱いています。

実際にこの1〜2年でかなり多くの商品・サービスが開発・販売されていますが、大きく分けて「健康課題の改善・解決を目的とするもの」(狭義のフェムテック)と「単に便利・面白い・気持ちが良いもの」(いわゆるフェムケアと呼ばれるもの)との2種類があると考えられます。そして、フェムテックに含まれる分野は、主に①月経関連、②不妊・妊孕性・妊活関連、③妊娠・出産・産後ケア関連、④更年期関連、⑤ウィメンズヘルスケア、⑥セクシャルウェルネス、の6つに分類されます。

あくまでも私見ですが、上記6つのどの分野でもかなり怪しい(安全性や有効性の根拠なく、消費者の不安を煽るような宣伝やスピリチュアル的な文言を多用する)商品が見受けられ、サプリメントや腟内挿入器具、外陰部ケア関連の商品などが目立ちます。当然、医療機器や医薬品ではなく、自費で購入する商品やサービスなので、あくまでも消費者の自己責任ではありますが、効果のないものに高額なお金を支払うことにもなりかねませんし、適切な医療機関の受診(検査や治療など)を逃すことにもつながりうるでしょう。

国内のフェムテック関連企業・サービスの大枠については、経済産業省が公開している2020年度の調査資料が参考になります1)。また、経済産業省は2021年度と2022年度に「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の間接補助事業者を公募し、採択事業の支援をするとともに効果検証と結果の公開を進めています。こうした動きから、国も適切な形でフェムテック分野を推進していきたい姿勢であると考えられますが、現時点で産婦人科領域の学会等の組織に動きは認められません。女性の健康に携わる専門家としてフェムテック産業にどのように向き合っていくのか、その意向や姿勢が問われていると感じます。

【文献】

1)経済産業省:令和2年度産業経済研究委託事業 働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に与える効果と課題に関する調査報告書(概要版).

   https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[女性の健康課題]

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