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近未来における内科医の役割 [エッセイ]

No.4824 (2016年10月08日発行) P.67

塚本玲三 (茅ケ崎徳洲会病院)

登録日: 2016-10-12

最終更新日: 2016-10-12

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  • 2015年5月以来、私は病院で総合内科医として、きわめて不完全で使い勝手が悪く、本来の診療に集中できない電子カルテに振り回され、悪戦苦闘しながら日々の診療を行っている。おかげで、私は毎日疲労困憊し、眼精疲労のため視力は低下し、肩もこり、姿勢も悪くなり、一気に老化が進行し、悪態をつきたくもなる。しかし、近年、急速に発展しつつある人工知能(artificial intelligence;AI)の流れに沿って社会全体が動いており、医療AI化の過渡期として、発展途上段階にある電子カルテの存在もやむをえないのかもしれない。

    チェスも将棋も囲碁も、名人よりもAIのほうが強くなり、自動運転自動車が街中を試走する時代がやってきたのである。それに引き換え、我々内科医は、200年以上前にラエンネックによって考案された聴診器をいまだに大事に用いて診察している。しかも、聴診器を十分に使いこなしていると自信を持って言える内科医はきわめて少ないのではなかろうか。聴診能力の格差は医師によって大きく左右され、聴診器の実用性が高いとは断言できないであろう。したがって、極端な表現をすれば聴診器は内科医のステータスシンボル、すなわち一種の装飾品に過ぎないのである。聴診精度を高めるために、最近電子聴診器が考案・発売されているが、音を大きくできるが雑音も大きな音で拾ってしまうため、病的音と雑音との鑑別に悩まされることが少なくない。

    米国の一部の大学では、聴診器よりもポケットサイズの小型エコー器の使用を医学生や研修医に推奨している。エコーのほうが聴診よりもより客観性に優れているから、医師間の診断能力格差が是正される。将来的には、聴診器とエコーの両者の機能を兼ね備えた電子機器が開発され、それをからだに当てるだけで自動的に診断が下されるようになるのではなかろうか。

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