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【識者の眼】「デジタル化が進む中で学術集会はどのように存在していくべきなのか(2)」重見大介

No.5134 (2022年09月17日発行) P.63

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2022-08-29

最終更新日: 2022-08-29

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新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って学術集会の形も大きく変わっています。前回(No.5133)、「デジタル化が進む中で学術集会はどのように存在していくべきなのか」を振り返ることが必要ではないか、ということを述べました。そこで今回は、既存の価値観にとらわれず、学術集会に何が求められていくのかを考えてみます。

まず、オンライン会議ツールやSNSが普及した現代において、従来の学術集会が提供していた多くの価値は「学術集会に参加せずとも手に入れられる」ようになってきています。単にその分野の最新情報を取得するだけであればopen accessの論文を読むことや国内外の学会等の公式SNSアカウントをフォローすることで実現可能です。また、自身の研究内容を世界に発信したいのであれば、ウェブサイトを作成してデータを公開したりプレプリントサーバーに登録したりといった手段も存在しています。他の医療従事者と意見交換をしたいのであればSNS上で自由に話し合えますし、オンライン勉強会も多数開催されています。このような中で、学術集会ならではの価値というものは何か、を真剣に考えることが重要だと思います。

たとえば、現地開催による学術集会で得られる貴重な経験として、普段は接する機会のない人(ある分野での著名な先生や若きホープなど)と直接会話ができる、ということが挙げられるでしょう。現地であれば、そのような人へ講演・発表時に質疑応答するだけでなく、会場内で偶然見かけた際に声をかける機会に恵まれることもあります。そのようなチャンスを意図的に設けるべく、オンラインの学術集会でも「(同意が得られた)参加者のログイン状況をリアルタイムに把握でき、連絡OKと表示されている人へはチャットを自由に送ることができる」「オンライン会議ツールを用いて特定の時間帯に幾つかの部屋を設けておき、誰でも自由に入退室・会話できる」などの取り組みが考えられます。

また、医師は勤務している医療機関の規模や特性によって働き方や提供する医療における考え方は自ずと変わります。大学病院、市中病院、クリニック、開業医など、異なる環境で働いている医師同士がコミュニケーションを取ることで、相互の理解を深めたり連携を強化できたりする可能性もあるでしょう。そうした企画もオンラインを活用することで実現しやすくなるかもしれません。

次号に続きます。

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[オンライン会議ツール][SNS]

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