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【識者の眼】「デジタル化が進む中で学術集会はどのように存在していくべきなのか(1)」重見大介

No.5133 (2022年09月10日発行) P.62

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2022-08-24

最終更新日: 2022-08-24

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新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大している中で、新しい生活様式の理解や普及が進められています。同時に、学術集会の形も大きく変わっています。多くの学術集会では完全オンライン化もしくは現地開催とオンライン参加のハイブリッドが採用され、学術集会へのアクセスという面ではかなり敷居が下がったのではないでしょうか。実際、週末に実施されることが多い学術集会にすべての日程で現地参加できる医療従事者は決して多くなく、当直や外来の合間を縫って貴重な休日を参加に割いてきたというのが実際のところでしょう。また、妊娠中や育児中の家庭では泊まりで遠方の学術集会に参加すること自体が至難の業であり、そうした環境が知識のアップデートや専門医の更新を阻んできた要因のひとつでもあったことは間違いないと思います。

学術集会のオンライン化によるメリットは多岐にわたります。前述したように、現地参加が難しい環境にいても参加できるということに伴い、往復の交通費や時間を消費せずに済む、同時刻に開催される複数の講演や発表をすべて視聴することができる、難易度の高い・馴染みの薄い講演内容を何度も見返すことで理解を深められる、専門医取得・更新に必要なポイントを適切にしっかり集められる、などなど。これらのメリットは非常に大きく、もはやオンライン参加を認めない学術集会では、その意思決定の理由を会員から問い詰められてもおかしくないのでは、とさえ思います。

しかしながら、当然オンライン限定開催もしくはハイブリッド開催によるデメリットも存在します。オンラインでは実現し難い点として最も大きいのは「現地ならではの交流や質疑応答、盛り上がりを得られない」ことではないでしょうか。加えて、ハンズオンセミナーが実施できない、ポスターを眺めながらふと目に入った興味深い研究との出会いが得にくい、などもあるでしょう。また、ハイブリッド開催では費用が大きく膨らみ、継続していくことが困難だという声も耳にします。このような理由から、現地開催に強く思い入れを持つ主催者側の気持ちも理解できます。

そこで、振り返るべきは「デジタル化が進む中で学術集会はどのように存在していくべきなのか」ということだと考えます。既存の価値観にとらわれず、何が求められていくのかを追求していく必要があるでしょう。

次号に続きます。

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[オンライン開催][ハイブリッド開催]

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