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【識者の眼】「デジタル化が進む中で学術集会はどのように存在していくべきなのか(3)」重見大介

No.5135 (2022年09月24日発行) P.61

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2022-08-29

最終更新日: 2022-08-29

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前号に続き、「デジタル化が進む中で学術集会はどのように存在していくべきなのか」について、もう少し考察してみます。

多くの学術集会では専門医取得・更新に必要な「ポイント・単位」を取得できるようになっていると思います。そこで、オンライン参加枠が標準となっていくのであれば、専門医にとって真に有益なコンテンツを多数用意して「ポイント・単位」に紐づけることで、専門性の維持や知識のアップデートを今以上に図れるのではないでしょうか。一方で現在は、オンライン参加では「ポイント・単位」の取得に関して制約がかけられているのでは、と感じることがあります。たとえば、ポイントを得られる視聴日時が指定され、その期間が数日間と短かったり、動画視聴の際に様々な不便さを伴っていたり、というようなものです。オンライン参加でも現地参加と同じ参加費を支払っています。「現地参加ならではのメリットを大いに楽しんでもらう」方向ではなく、「オンライン参加では得られるメリットに制約を設ける」ような方向には進んでほしくないな、と強く思っています。

また、近年は世界的に論文投稿数が増加しており、新たな知見や情報のアップデートが常に求められる時代になっています。大規模データを用いた臨床研究や複雑な統計手法を用いた疫学研究などの重要性は年々増しています。そこで、必要となるのは論文をきちんと読み解くスキルですが、医師を含めて臨床に携わる医療従事者がそのトレーニングを受ける機会は決して多くないというのが現状ではないでしょうか。若手だけでなく中堅やベテランにとっても重要なスキルになるので、学術集会では「臨床研究論文を適切に読み解くスキル」や「最新の英語論文の解説&ディスカッション」などを提供する企画がもっと増えてもいいのではないかと考えています。こうした企画も、オンライン参加やオンデマンド配信を活用することで他分野(疫学、臨床疫学、生物統計学など)の専門家をまねきやすくなり、より多くの参加者に視聴いただけるのではないでしょうか。

全3回にわたって、デジタル化が進む中で学術集会に求められるもの、オンライン技術の活用アイデアなどを考察しました。単に「既存のコンテンツをそのままオンラインで配信する」だけではもったいないと思いますし、学術集会の価値や存在意義が薄まってしまうのではないでしょうか。今後の各学術集会の動向に注目していきます。

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[オンライン技術の活用]

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