私は定年まで2年を残して大学をやめ郊外の基幹病院に移った。そこを3年で退職し、これまでのスポーツ選手との関係を続け地域で普通の整形外科医として働くため後輩の医療法人に移った。その年の10月、私の外来にひょっこり70歳過ぎの男性患者が訪れた。左膝痛が主訴である。背が高く、日に焼けていていかにもスポーツマンらしい。テニススクールを経営しており、選手は引退したがテニスを指導している。
診断は内側大腿骨顆部の無腐性壊死(SONK) だがX線像はほぼ正常だった。壊死という表現は病理学的に正しくなく、脆弱性骨折を病態とする疾患である。下肢アライメントが悪くなくROM制限は少ないが、非常に強い膝前内側の疼痛を訴える患者が多い。1~2カ月の消炎鎮痛後に残る疼痛を膝蓋骨・膝蓋腱上を疼痛許容内にほぐすことで大多数の患者を保存的に扱ってきた。
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