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【識者の眼】「アナフィラキシーの予防と診療のコツ」宮坂信之

No.5130 (2022年08月20日発行) P.64

宮坂信之 (東京医科歯科大学名誉教授)

登録日: 2022-07-05

最終更新日: 2022-07-05

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からだに何らかの抗原が入ると急速に起こるアレルギー性の全身性反応をアナフィラキシーと呼ぶ。医療関係者が最もおそれる副作用である。

典型的には、蕁麻疹、口唇腫脹、呼吸困難、血圧低下などが起こる。特に血圧低下が起こる場合には、アナフィラキシーショックとも呼ばれる。医薬品の投与後に、くしゃみ、眼などのかゆみ、咳(喘鳴を伴う)、腹痛(急激な嘔吐や下痢)が出始めたら、要注意である。

アナフィラキシーには、食物、虫刺され、医薬品など多くの原因がある。医薬品でアナフィラキシーが起こる頻度は数千に一つとされ、千三つより少ない。抗菌薬でも造影剤でも起こるが、特にヨード系造影剤が多い。ちなみに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種での報告は100万人に数人である。これは飛行機が落ちる確率と同じか、あるいは低いとされる。

メカニズムとしては、IgE抗体が関与する即時型(Ⅰ型)アレルギー反応が多いが、全身のマスト細胞活性化はIgEの関与なしにも起こりうる。

予防は、既往歴の問診にまさるものはない。

医薬品の投与開始5分以内に起こることが多く、通常は30分内に症状が起こる。静注、点滴のほうが起こりやすく、経口薬の場合には時間的に少し遅れる。

鑑別しなければならないものには、気管支喘息、不安発作、失神などがある。ただし、上記の症状が複数あれば、臨床的には鑑別は容易である。一方、採血やワクチン接種で多いのは迷走神経反射である。この場合には、冷水を飲ませれば回復することが多い。

治療は0.1%アドレナリンの筋注である。食物や蜂アレルギーの場合には、自己注射用のエピペンを持っていることが多い。日本ではステロイドが使われることもあるが、米国は医学生に聞いてもアドレナリンとの答えが正確に返ってくる。実地教育のせいであろう。もちろん酸素吸入、気道確保、静脈確保も必要である。

アナフィラキシーを疑った時には、ためらいは禁物である。

宮坂信之(東京医科歯科大学名誉教授)[アレルギー反応]

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