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徐脈[私の治療]

No.5122 (2022年06月25日発行) P.42

松村一希 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)

登録日: 2022-06-28

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  • 徐脈は心拍数60回/分未満と定義されるため,比較的遭遇することが多いが,すべての徐脈の患者を治療する必要はない。まずは徐脈に伴う症状や徴候を認めるかどうか,すなわち症候性徐脈かどうかを判断することが重要である。症候性徐脈であれば,薬剤投与やペーシングの施行,専門医への相談等,速やかな対応が求められる。

    ▶病歴聴取のポイント

    症候性徐脈とは,「失神や前失神,一過性のめまいやふらつき,心不全症状,脳灌流低下に起因する意識障害などの臨床症状の発生に直接関与する,徐脈性不整脈」と定義される。つまり,上述のような症状を主訴とする患者では,常に徐脈の有無を確認する必要がある。また,徐脈によると思われる症状の頻度,持続時間,状況,誘因などを聴取する必要がある。薬剤の中には,徐脈性不整脈を誘発または悪化させるものがあるため,処方薬と市販薬の両方を聴取することが重要である。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    臨床的には心拍数が50回/分未満の場合に,徐脈による症状が問題になることが多い。徐脈に伴う心拍出量の低下による血圧の低下や,徐脈による心不全に伴う酸素化の低下などが生じていないかを確認する。あるいは,徐脈と意識障害を呈している場合,Glasgow coma scaleを用いた意識レベルの評価と瞳孔不同の有無の確認が必要になる。

    【身体診察】

    徐脈に伴うショック徴候の有無を速やかに確認する。血圧が低値であればショックである可能性は高いが,血圧が正常値でも末梢冷感や湿潤,capillary refilling timeの延長,網状皮斑などの徴候があればショックと判断し,速やかな治療介入が求められる。また,失神を呈した患者などにおいては,転倒に伴う外傷の有無を評価する必要がある。病歴から外傷が存在する,あるいは疑わしい/否定できない場合には,外傷初期診療に則った対応が求められる。

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