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胆道閉鎖症(小児)[私の治療]

No.5119 (2022年06月04日発行) P.49

金森 豊 (国立成育医療研究センター小児外科系専門診療部小児外科診療部長)

登録日: 2022-06-01

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  • 胆道閉鎖症は,肝外胆管の閉塞により乳児期早期に閉塞性黄疸を呈し,放置すると死亡する重篤な疾患である。その原因はいまだ明らかでなく,胆道形成異常説,生後早期のウイルス感染説,母子間の免疫担当細胞の移行によるマイクロキメリズム説,などが提唱されている。発生頻度は,出生1万人に対して1例と言われており,わが国の登録制度による全国統計では年間100例前後の発症がある1)

    ▶診断のポイント

    乳児期早期に黄疸を認める場合には精査が必要である。また,胆汁の分泌不全により便色が白色調となることで疑われることも重要で,2014年からわが国では母子健康手帳に便色カラーカードが綴じこまれ,新生児期から乳児期早期のスクリーニングに利用することが勧められている。本症は早期診断により,予後の改善が見込まれることが明らかになっており,便色異常を早期に発見して精査することが古くから行われてきた。

    乳児期早期に黄疸を呈する疾患はほかにも多く存在し,最近ではそれらの診断法も進歩しているので,小児肝臓内科医と連携して鑑別診断を行うことが勧められる。最近では本症に対する新しいスクリーニング法が開発されつつあり,スマートフォンを用いて便を写真撮影し便色の判断を依頼するアプリの開発や,血清MMP-7(matrix metalloproteinase-7)や尿中27-hydroxycholesterolなどが本疾患の特異的診断マーカーとして期待されている。

    胆道閉鎖症が疑われた場合には,血液検査でのビリルビンや肝胆道系酵素の測定,腹部超音波検査,胆道シンチグラム,十二指腸液検査などを行い,本疾患が強く疑われる場合には胆道造影検査を施行し,肝外胆管の閉塞を証明して診断を確定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    上記診断により胆道閉鎖症と診断されたら,胆道造影に続いて肝門部空腸吻合術(葛西手術)を施行する。胆道の再建は空腸ルーワイ再建として,つり上げ空腸は十分な長さをとることが胆管炎の予防に重要である。逆流防止弁は造設しない。術後は胆管炎の予防が重要で,抗菌薬の十分な投与を行い,胆汁分泌を促すために十分な補液管理と術後からデヒドロコール酸投与を開始し,ステロイド投与を術後1週から開始する。胆汁分泌が十分な場合には術後1カ月ほどで減黄するので,その後は胆管炎予防に留意する。また,胆汁分泌が十分でなく,減黄が得られない場合には,食道静脈瘤出血などに注意しながら栄養管理を続行し,全身管理を行いながら生体肝移植の適応を判断していく。

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