株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

■NEWS 【米国心臓病学会(ACC)】慢性心不全に対する厳格Na制限の有用性は証明されず:RCT“SODIUM-HF”

登録日: 2022-04-05

最終更新日: 2022-04-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

わが国の心不全ガイドラインでは、慢性心不全例のナトリウム(Na)摂取量として「6g未満/日」を推奨している。しかし同ガイドラインに記されている通り、「塩分制限の心不全の予後への効果については、明確なエビデンスが得られていない」。4月2日からワシントンD.C.で開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会では、この点を検討した初めての大規模ランダム化試験(RCT)“SODIUM-HF”がアルバータ大学(カナダ)のJustin A. Ezekowitz氏により報告された。臨床転帰改善作用は確認されなかったが、QOL改善には有効である可能性が示唆された。パネルディスカッションも含め、紹介したい。

SODIUM-HF試験の対象は、最大用量のガイドライン推奨薬剤治療下でNYHA分類「Ⅱ-Ⅲ」だった、南北米、オセアニアの外来心不全841例である。左室駆出率平均値は36%、「血清Na濃度<130mEq/L」や「推算糸球体濾過率(eGFR)<20mL/分/1.73m2」例などは除外されている。

平均年齢は67歳、33%が女性だった。また33%は過去1年間に心不全入院歴があった。eGFR平均値はおよそ「60mL/分/1.73m2」だった。

これら841例は「1日Na摂取量<1500mg」の「厳格」Na制限群(397例)と「通常」Na制限群(409例)にランダム化され、12カ月間、非盲検で観察された。

「厳格」群では、試験前摂取カロリーを維持するメニューが用意され、それに従うよう指示された。ただしメニュー内の食材は、添付食品リストに掲載された代替素材と自由に交換できた。これらメニューは事前に、その地域・食文化に適するよう調整されたものである。

その結果、Na摂取量は、「厳格」群では試験開始時の2286mg/日から半年後には1649mg/日まで低下し、試験開始1年後も1658mg/日で維持された。「通常」群(2073mg/日)に比べ、415mg/日の低値となった。このNa摂取量は、3カ月ごとの面談時における過去3日間食品記録から推算された値である(「厳格」群ではNa制限が不十分な場合、指導も実施された)。

なお、観察期間中の収縮期血圧、体重はいずれも、両群間に差はなかった。エネルギー摂取量も同様だった。

1年間の観察後、1次評価項目である「心血管系(CV)入院/救急外来受診・総死亡」のリスクは、両群間に有意差を認めなかった(「厳格」群におけるハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.63-1.26)。 内訳を見ると、「総死亡」は「厳格」群でHRが1.38(95%CI:0.73-2.60)と増加傾向、「CV入院」は0.82 (0.54-1.24)、「CV救急外来受診」は1.21(0.60-2.41)だった。

一方、1年後にNYHA分類が改善した割合は「厳格」群で有意に高く(非改善オッズ比:0.59[0.40-0.86])、この差は6カ月の時点で有意となっていた。同様に、KCCQスコアで評価したQOLも、「厳格」群では1年後、著明かつ有意な改善が認められた。一方、6分間歩行距離には、差を認めなかった。

Ezekowitz氏は、介入前Na摂取量がもっと多い患者群、あるいはより厳格なNa制限が可能だったら別の結果が得られるかもしれないとの見解を示した。

パネリストからは、①聞き取り調査に基づく「415mg/日」のNa減量は、実際の減量を過大評価している可能性、②患者が割り付け群を知っていたことが、NYHA分類とQOL改善に影響していた可能性、③介入前Na摂取量や腎機能に合わせた個別Na制限目標値設定の要否――が指摘された。

本試験は、カナダ健康研究所と大学病院基金(カナダ)、ニュージーランド保険研究審議会から資金提供を受け実施された。また報告と同時に、Lancet誌でWeb公開された。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top