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【識者の眼】「ウェルビーイングを考える〜第62回日本呼吸器学会開催に向けて〜」横山彰仁

No.5112 (2022年04月16日発行) P.67

横山彰仁 (高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授)

登録日: 2022-04-04

最終更新日: 2022-04-04

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多くの現代病はがんを含めた非感染性疾患であり、病気を治癒させるというよりも、患者さんのよりよい健康状態をめざすことが主要な目標になる。WHOは健康を「Health is a state of complete physical,mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity」と定義している。この「ウェルビーイング」という言葉は、近年、ビジネスの世界でも健康経営として重視され、社会がめざすべきゴールのひとつとして浸透してきた。

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が席巻しており、このCOVID-19はまさにウェルビーイングを侵す重大な感染症である。病気は当然unhappyなことだが、医療は包括的なベクトルの総和をhappyな方向に向けるべく努力する。もちろん、現代では病者のQOLをより良くすることが治療の目標となっている。ただ、QOLの概念には本来生きがいや人生の満足度も含まれるものの、健康関連QOLが主に評価されており、ウェルビーイングを評価することはあまりない。

ウェルビーイングは「幸せ」とも訳されることがあるが、幸福というのは一元的な心地よさ・ぬくもりなど主観的なものである。また、日本国憲法第十三条において定めている、「……生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」の幸福とは米国独立宣言に由来するとされるが、その元々の意味は「私的財産の獲得」とも言われている。ウェルビーイングは多元的に評価すべきで、セリグマンは心地よさなどのポジティブ感情のほかに、エンゲージメント、意味・意義、関係性、達成、という4つの要素を挙げている。医療においても、介入・治療の評価にもっと重視し研究すべきではないだろうか。

筆者は本年4月22日から3日間、「ウェルビーイングを目指す呼吸器病学」をテーマとして日本呼吸器学会学術集会を京都でhybrid開催する。日本呼吸器学会が推進してきたCOVID-19罹患後症状のシンポジウムを日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、日本循環器学会と共同で開催するほか、0次予防、日本人の特性、幸福学などに関する講演もお願いしており、患者さんのみならず社会のウェルビーイングを考える会にしたいと考えている。興味のある先生方のご参加をお願いしたい。

横山彰仁(高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授)[健康]

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