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在宅医療での倫理事例[2]─「落としどころ」を探るには[プライマリ・ケアの理論と実践(132)]

No.5104 (2022年02月19日発行) P.12

足立大樹 (ホームケアクリニック横浜港南院長)

登録日: 2022-02-17

最終更新日: 2022-02-16

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SUMMARY
在宅医療では,医学的妥当性だけでなく,患者の生活上の課題が様々に絡み合い,倫理的にも複雑な問題となっていることが多い。それらを解きほぐし,患者にとって望ましい選択をしていくための方策を示したい。

KEYWORD
MCD (moral case deliberation)
ケースを担当する多職種みんなが対等に意見を出しながら徹底的に話し合い,ケースの理解を深めていく臨床倫理実践の方法1)

足立大樹(ホームケアクリニック横浜港南院長)

PROFILE
2004年に横浜市栄区で診療所を開業。以来,横浜市南部地域で在宅医療を続けている。2012年に診療所を移転し,現在の診療所名となった。2016年より横浜市立大学臨床准教授。2020年より日本医学哲学・倫理学会推薦評議員。

POLICY・座右の銘
他者の合理性を理解する

つい最近訪問診療を開始した男性の妻から,午前1時過ぎに電話がかかってきた。「おしっこの管が流れてないみたいなんです。先生,来てもらえませんか?」。往診することをまずは伝え,カルテを見返してみる。

1 ケース

CASE:93歳男性。心原性脳梗塞後遺症,発作性心房細動,高血圧症,2型糖尿病,アルツハイマー型認知症。

現病歴:高血圧症,2型糖尿病で20年以上前から近医に通院していた。一昨年頃から物忘れも目立つようになり,近医でアルツハイマー型認知症と診断され,抗認知症薬が開始された。昨年末に自宅室内で動けなくなっているところを,買い物から帰ってきた妻に発見され救急搬送,心原性脳梗塞の診断で市内の急性期病院に入院となった。入院中に尿閉となりバルーンカテーテルを留置された。左片麻痺が残存した状態で約1カ月後にリハビリ病院に転院となった。約2カ月入院したが,リハビリへの意欲に乏しく,ほぼ一日中ベッド上生活の状態に留まった。入院中にカテーテル抜去を本人が希望したため抜去が試みられたが,自排尿が確認できず留置継続となった。内服加療とカテーテル管理の継続を主な目的として,約2週間前の自宅退院日から訪問診療を開始した。

生活状況:87歳の妻と一軒家で2人暮らし。妻は日常生活は自立しているが,腰部脊柱管狭窄症,両変形性膝関節症などがあり,介護負担が過度にならないように注意が必要である。

介護状況:介護認定 要介護4。介護保険サービスは,訪問看護を週1回利用するに留まっている。ケアマネからの情報では,本人・妻ともに他人が関わることをあまり好まず,訪問看護の導入について同意を得るのがやっとだったという。

以上のような情報を確認した上で,1時半頃に患者宅に到着した。蓄尿バッグとカテーテル内には尿はごく少量しか確認できない。カテーテルの閉塞だろうと推測し,カテーテル交換の必要性について患者本人と妻に説明し,同意を頂く。留置されていたカテーテルを抜去してみると,やはり先端が澱のようなもので閉塞していた。そして,新たなカテーテルを挿入したところ,約800mLの尿が一気にカテーテルを通して蓄尿バッグに流出してきた。患者は「ああ,楽になった,助かった」と安堵の表情を浮かべる。そしてさらに「楽になったから,もうこの管は抜いて欲しい」と加えられた。えっ……。ここで抜いてしまったら,また尿が出なくなって,つらい思いをするじゃないか……。







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