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心不全、実はがんより予後が悪いのをご存知ですか?心不全、実は予防できるのをご存知ですか?[エッセイ]

No.5101 (2022年01月29日発行) P.65

斎藤能彦 (奈良県立医科大学循環器内科教授)

登録日: 2022-01-30

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2019年に循環器病対策基本法が施行されました。がん対策基本法から遅れること12年です。わが国の死因の第1位は、1981年より連続41年悪性新生物(がん)です。がんは不治の病の代表でした。しかし、がん医療は一変いたしました。早期診断・早期治療の重要性が定着した他、最近の医学の進歩により分子標的薬や免疫療法が長足に進歩し、もはや、がんは治る病気の仲間入りを果たそうとしております。

一方、新聞の訃報欄で「心不全」はよく目にしますが、わかりにくいという意見をよく耳にします。確かに、「あなたは心不全ですね!」と説明する機会は多いですが、心不全と聞いても、聞き手聞き手で、頭に思い浮かべているイメージが随分異なっているようです。そこで、一般向けの心不全の定義を、2017年、日本循環器学会と日本心不全学会で作成しました。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」としました。

「だんだん悪くなり」という意味は、一旦、有症状の心不全を発症してしまうと、増悪と改善を繰り返しながら進行し、完全には治らないということを意味しております。また、生命はどれくらい縮まるのでしょうか? 実は、昨年のデータでは、心不全で入院された症例の4年生存率は55.7%で、全がんの5年生存率の63.2%より悪いのです。心不全は一旦発症すると後戻りができず、予後はがんより悪いのです。したがって、予防が非常に大切です。高血圧、糖尿病、慢性腎臓病は心不全のリスクです。これらの疾病では、共通して、減塩と降圧薬による厳格な血圧管理により、心不全の発症を予防できることが明らかです。また、風邪は万病の元で、心不全の重症化の強いリスクです。

最近10年間、心不全による入院数は毎年1万人ずつ増えていましたが、2020年は初めて前年より2万人以上減少しました。これは、コロナによる、マスク、消毒と巣ごもりによる予想外の副産物でしょうか?

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