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生後6カ月以下の乳児において,母乳だけでは将来的な牛乳アレルギーは予防しにくいのか

No.5095 (2021年12月18日発行) P.49

永田 智 (東京女子医科大学小児科学講座教授)

今井孝成 (昭和大学医学部小児科学講座教授)

登録日: 2021-12-16

最終更新日: 2021-12-14

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  • 最近,「生後間もなくに牛乳蛋白を含む乳を与えることは,その後の牛乳アレルギーの発症によくない」とされる論文が出ました。一方で,生後4カ月前後では,むしろ1回に10mL程度の人工乳を加えたほうが将来の牛乳アレルギー発症予防に有効とされる報告もあります。
    「生後6カ月以下では,母乳だけでは将来的な牛乳アレルギーは予防しにくいのか」という質問へは,答えに窮することがありますが,ご専門のお立場から, 昭和大学・今井孝成先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    永田 智 東京女子医科大学小児科学講座教授


    【回答】

     【研究成果は賛否両論あり,現時点で結論が出ていない】

    食物アレルギーの発症予防は,その先のアレルギーマーチの進展予防を含めて,小児アレルギー界隈ではホットトピックスとなっています。

    端緒は二重抗原曝露仮説(2008年)にはじまりますが,LEAP研究〔落花生介入,NEJM(2015年)〕1)が発表され,一気にその学術的機運が高まりました。すなわち,乳児早期からの抗原摂取介入が,当該抗原のアレルギー発症抑制に寄与する可能性です。その後,わが国のPETIT研究〔加熱鶏卵介入,LANCET(2016年)〕2)が早期介入を支持し,日本小児アレルギー学会は鶏卵早期摂取に関する提言を発表しました。

    しかし,LEAP研究のグループが実施したEAT研究(多品目介入)3)や鶏卵を中心とした早期介入による複数の発症予防研究は,必ずしも同等の良い結果(予防効果)を報告していません。JAMA(2016年)に掲載されたメタ解析では,早期摂取の食物アレルギー発症予防戦略に対して,肯定的な記述となっていません4)

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