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新しい頭痛発症抑制薬「抗CGRPモノクローナル抗体」による片頭痛治療─ガルカネズマブ発売後早期のリアルワールドデータ

No.5092 (2021年11月27日発行) P.34

團野大介 (富永病院頭痛センター副センター長)

菊井祥二 (富永病院脳神経内科副部長/パーキンソン病治療センターセンター長/脳卒中センター副センター長)

竹島多賀夫 (富永病院副院長/脳神経内科部長/頭痛センターセンター長)

登録日: 2021-11-29

最終更新日: 2021-11-25

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Point

2021年4月に新しい片頭痛発症抑制薬ガルカネズマブが発売された

ガルカネズマブは片頭痛病態の本態であるカルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的にしたモノクローナル抗体であり,有効性と安全性が高い

富永病院頭痛センターでは発売後4カ月間で150例以上に使用している

有効例は117例(77.0%)で,従来の治療ではきわめて難治であった症例でも著効することがある

1. はじめに

片頭痛は支障度の高い一次性頭痛である。世界保健機関(WHO)では片頭痛を,存命中の疾病負担を表す「障害生存年数」が増加する疾患の第2位に位置づけている1)。わが国の片頭痛患者は約840万人と推定されており7割以上で支障度が高いが,従来の片頭痛予防薬は不十分な治療効果,有害事象によるアドヒアランス低下が問題になっている2)3)

近年,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)を標的にした抗CGRPモノクローナル抗体の片頭痛発症抑制薬としての安全性と有効性が報告された4)〜7)。わが国でも2021年4月に抗CGRPモノクローナル抗体ガルカネズマブの発売が開始された。ガルカネズマブは片頭痛病態の本態である三叉神経血管系に直接作用する点で従来の予防薬と異なる。本稿では,ガルカネズマブの特徴と,富永病院頭痛センターにおける同薬発売後4カ月間の使用経験について述べる。

2. ガルカネズマブの有効性と安全性

ガルカネズマブはCGRPに対するモノクローナル抗体である。標的であるCGRPについては,片頭痛発作直後の頸静脈中CGRP濃度が対照群に比して有意に高値であったことや,片頭痛患者へのCGRP投与による片頭痛様発作誘発の報告から,片頭痛病態への関与が示唆されている8)9)。このような背景からCGRPを標的にしたモノクローナル抗体ガルカネズマブが開発された。

反復性片頭痛患者915人を対象にした第3相臨床試験EVOLVE-2試験では,4週間ごとにガルカネズマブ120mg(初回にローディングドーズとして240mg),もしくはプラセボが投与され,6カ月の二重盲検期間における1カ月当たりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化が評価されたが,プラセボ投与群で2.3日の減少であったのに対して,120mg投与群では4.3日の減少であり有意差が確認された。ローディングドーズを用いることにより,効果発現は投与後第1週目の早期から認めている5)

慢性片頭痛患者1113人を対象にした第3相臨床試験REGAINでも同様に,1カ月当たりの片頭痛日数は,プラセボ投与群で2.7日の減少が認められたのに対して,120mg投与群で4.8日と有意に改善していた6)

他剤での治療効果不十分例を対象としたCONQUER試験でも,ガルカネズマブ治療の有効性が示されている7)

また,従来,薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH)は,原因薬物の中止が治療の原則であったが,ガルカネズマブ投与によりMOH合併例の急性期治療薬使用の減少が確認されている10)。主な有害事象に注射部位反応があるが,重篤な有害事象の発現に関して群間差は認めておらず,日本人でも12カ月間のオープンラベル試験で長期安全性が確認されている4)〜7)

3. ガイドライン

2021年4月に厚生労働省から「最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ」が公表され,投与前の片頭痛日数が平均4日/月以上であり,既承認の発症抑制薬が,①効果不十分,②忍容性が低い,③禁忌や副作用から安全性への強い懸念がある,などの理由によって使用できない場合に使用が可能である11)。日本頭痛学会も5月に「CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)」を公表し,3回投与後を目安に治療上の有益性を評価し,症状改善が認められない場合には,投与中止を考慮することなどを推奨している12)

4. 富永病院頭痛センターにおけるガルカネズマブ使用経験

富永病院頭痛センターでは,頭痛専門医は常勤7名,非常勤1名で急性頭痛から慢性頭痛まで幅広く頭痛性疾患を診療している。2010年の開設以来8000例以上の頭痛患者を診療しており,約半数が片頭痛で,慢性片頭痛,MOHが多い。ガルカネズマブ発売以来多くの患者にガルカネズマブを使用し,対象者には月に1回,外来で投与を行っている(図1)。

  

今回,2021年4月末発売から8月までの4カ月間に18歳以上の片頭痛患者でガルカネズマブを使用した症例について後方視的に分析した。対象症例は計152例で,女性が81.6%,慢性片頭痛が106例で,73例がMOHを合併していた(表1)。最大で4回まで投与されており,患者申告に基づく医師判断による「著明改善」が35例(23.0%),「有効」が47例(30.9%)であった。「やや有効」まで含めた有効例は117例(77.0%)であった(図2・3)。従来の治療ではきわめて難治であった症例でも著効することがあり,著明改善例では,「劇的に」「嘘のように」「信じられない」などの表現で頭痛改善を報告した。

著効例の1例を示す(図4)。効果出現時期は117例のうち,初回投与後が89例(76.1%)と最も多く,早期の効果を認める症例では著明改善が多い(表2)。有害事象を7例で認めたがいずれも重篤ではなく,効果との関連も一定でなかった(表3)。

5. おわりに

新しい頭痛発症抑制薬であるガルカネズマブの特徴と,発売後早期の使用経験を述べた。ガルカネズマブは効果発現の早さ,MOH例を含めた有効性の高さ,安全性の高さが特徴で,今後の片頭痛治療の要になる可能性がある。片頭痛患者への実際の使用にあたってはガイドラインを遵守するように努める必要がある。また,無効例の存在や有害事象,薬価などについても丁寧に説明し,過度な期待は持たせずに,3~6カ月程度治療効果をみることを提案するのが良いと考えられる。

【文献】

1)GBD 2016 Neurology Collaborators:Lancet Neurol. 2019;18(5):459-80.

2)Sakai F, et al:Cephalalgia. 1997;17(1):15-22.

3)Hepp Z, et al:Cephalalgia. 2015;35(6):478-88.

4)Hirata K, et al:Expert Opin Drug Saf. 2021;20(6):721-33.

5)Skljarevski V, et al:Cephalalgia. 2018;38(8):1442-54.

6)Detke HC, et al:Neurology. 2018;91(24):e2211-e21.

7)Mulleners WM, et al:Lancet Neurol. 2020;19(10):814-25.

8)Goadsby PJ, et al:Annals of neurology. 1990;28(2):183-7.

9)Lassen LH, et al:Cephalalgia. 2002;22(1):54-61.

10)Dodick DW, et al:Cephalalgia. 2021;41(3):340-52.

11)厚生労働省:最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ(遺伝子組換え). 2021.
  [https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768564.pdf]

12)日本頭痛学会:CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版). 2021.
  [https://www.jhsnet.net/guideline_CGRP.html]

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