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(1)がんと診断されたときからの 緩和ケアを実践する─痛みの評価 [特集:在宅でがんの痛みに対処する]

No.4814 (2016年07月30日発行) P.24

山代亜紀子 (京都府立医科大学疼痛 緩和医療学講座)

細川豊史 (京都府立医科大学疼痛 緩和医療学講座教授)

登録日: 2016-10-16

最終更新日: 2017-01-23

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  • がんと診断されたときからの緩和ケアとは,日常臨床の中で行われる基本的緩和ケアである

    がん患者の痛みの診療は,患者の訴えを“聴く”ことから始まる

    身体的な痛みだけでなく,精神的苦痛,社会的苦痛,スピリチュアルペインなどのtotal painを包括的に評価する

    がん患者の身体的な痛みは,がん性疼痛と非がん性疼痛にわけて評価する

    「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」は,基本的緩和ケアを系統的に学ぶ場として全国で開催されている

    1. がんと診断されたときからの緩和ケア

    2007年のがん対策基本法の施行から9年,わが国の緩和ケアは今まさに発展期を迎えようとしている。がん診療連携拠点病院だけでなく,各地で結成された緩和ケアチームが活発に活動しており,ホスピスや緩和ケア病棟,在宅緩和ケアを専門に取り扱う診療所も増加傾向である。日本緩和医療学会では,市民に向けた緩和ケアの説明文として「緩和ケアとは,重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ,より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」1)を掲げ,その普及啓発に努めている。
    2007年当時には,後述する「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」はまだ開催されておらず,一部の緩和ケアチームやホスピスで専門的緩和ケアが行われているにすぎなかった。このため,同年施行されたがん対策基本法においては,それらのソースを使った「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」と,そのための人材(ソフト)の育成と基盤(ハード)の整備が第1期がん対策推進基本計画に盛り込まれた。そして2012年6月の第2期がん対策推進基本計画では,基本的緩和ケアを学んだ4万人程度の緩和ケア研修会の修了者が育成されたため,「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として掲げられた。
    まず,「がんと診断されたときからの緩和ケア」とは一体何を指すのかに言及したい。かつて,緩和ケアとは「ターミナルケア」「終末期ケア」と同義であり,治療の手立てがなくなった後に行われる姑息的治療ととらえられていた。そのため,患者は緩和ケアへの移行を死亡宣告のように感じ,「何もしてもらえない」「見捨てられた」といった緩和ケアへの陰性感情を持つ原因となっていた。しかし現在では,緩和ケアは手術,化学療法,放射線治療などの抗がん療法と並行して,がんと診断されたときから行うべき治療として位置づけられており,より早期からの介入が推奨されている(図1)2)


    「がんと診断されたときからの緩和ケア」が意図するところは,診断時や治療期に関わる一般的な医療者が,日常臨床の中で基本的な緩和ケアを行うことである(図2)2)。これは,地域でがん患者の生活を支える在宅医,かかりつけ医にも当てはまる。一般診療の中でまず基本的緩和ケアを行い,それでも解決の難しい問題が生じた際に,緩和ケアチーム,緩和ケアセンター,緩和ケア外来,緩和ケア病棟,在宅緩和ケアチームなどの専門的緩和ケアを提供できる組織,施設に相談や紹介ができるシステムづくりが重要となる。

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