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ひとつ手前の駅から[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(341)]

No.5052 (2021年02月20日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-02-17

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何度か書いたことがあるが、生来いらちである。特に思うのは、電車から降りる時だ。恥ずかしいくらいに、誰も準備していない時点で立ち上がってしまうことが多い。

ただし、これには言い訳がある。生まれ育った場所のせいも大きいのだ。自宅の最寄り駅は大阪と京都を結ぶ京阪電車の千林駅。このあたりは、やたらと駅の間隔が短い。

千林駅からひとつ京都寄りの滝井駅までは440メートルで、大阪寄りの森小路駅も600メートル足らず。電車だと1分もかからない。小さいころからそんな電車に乗り慣れてきたから、前駅を出たら条件反射のように腰を浮かしてしまいがちなのである。

滝井駅と次の土居駅の間はもっと短くて、関西の鉄道各社の本線における最短の418メートルしかない。ただし、これは駅の中心部の間の距離であって、ホームの端から端だと、わずか159メートルらしい。

車両の長さが18メートル強だから、8両連結だと、最後部がホームを離れるのとほぼ同時に先頭が次の駅に到着する。なんだかおもろいので、カーブしている土居駅の端っこに立ちながらこの様子を見るのがけっこう好きだったりする。

ひとつ手前の駅から、といえば、3~4年前から新しいルールを導入したものがある。こちらは新幹線での話。自慢じゃないが、何度も何度も新幹線で忘れ物をしたことがあって、そのすべてがスマホである。

忘れた時のシチュエーションはいつも同じ。駅に着く直前まで用事をしていて、大急ぎで身支度と荷造りをし、スマホを隣の座席に置き忘れるというパターンである。

逆にいうと、落ちついて行動していたら忘れないはずだ。で、東京へ行くときは品川駅、大阪へ帰るときは京都駅を出る時点で、なにをしていようが作業はストップして、帰り支度を始めるようにした。えらいもんで、さすがにそれ以来忘れ物をしなくなった。

同じくらいの回数、宿泊したホテルの部屋に忘れ物をしてきた。これは、荷物をちょっとだけ出すから忘れるのだと判断。そこで、荷物のほとんどを取り出して1カ所に置くことにした。こちらも効果はてきめんだ。

時間と手間がもったいないような気がしないではない。しかし、あっちゃ~忘れ物をしてしもた、というあの何とも情けない気分を味わわないメリットの方が絶対に大きいと自分を納得させている。

なかののつぶやき
「本文中の駅間の距離などは日経のHPから転載させてもらいました。記事内容に興味のある方は【日経×千林×土居】で検索してみてください。千林は商店街があったこと、滝井は関西医科大学があったこと(現在は移転して滝井にあるのは関西医科大学総合医療センターのみ)、土居は人口が多かったことが駅設置の理由としては大きいみたいです。短い駅間、そのちまちました感じがとても気に入ってます」

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