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ウルトラマラソン[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.55

小島直樹 (公立昭和病院救命救急センター担当部長)

登録日: 2021-01-02

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みなさん、昨年はどれくらい新型コロナ感染症に振り回されましたか?

医療機関の所在地、規模、個人の役職によって関わり方は異なりますが、業務、私生活など、あらゆる面で考え方の転換が求められました。

未知の感染症に対する新たな診療体制を構築する上で、今まであまり接点のなかったスタッフ、特に事務や設備職員、さらには周辺地域の先生方と連携する機会が増え、病院の中だけでなく地域全体の連帯感、チーム力がパワーアップしました。

個人的には、外出自粛、飲み会自粛が続き、勤務以外の時間は他に何もやることがなく、ひたすら自宅近くの公園をぐるぐる回り、月間走行距離が15年のランニング人生の中で一番多くなりました(汗)。

実際のコロナ診療では、1月頃は現実感なく対岸の火事を見るようでしたが、2月頃から国内での感染者が増えはじめ、入院患者が重症化しECMO導入など、身近に危機感が生まれ、3月は入院患者が次々と重症化しECMO導入が続き、感染力の強さとただならぬ重篤感を肌身で感じました。

5月以降、重症例は減少しましたが、東京都の感染者数は一向に収束の兆しがなく、病院内クラスターも次々発生しています。ERでは“常に”新型コロナ感染症を念頭に診療し、周囲への感染を確実に防御するように万全を期して臨まなければならない状況が延々続いています。

趣味のランニングに例えると、いざ感染対策に乗り出し診療体制を構築するには瞬発力が必要でしたが、その後は、まさに持久戦のフルマラソン、むしろウルトラマラソンと同じ心構えが必要です。レースには必ずゴールがあるという大きな違いはありますが、途中であきらめず、しっかりペース配分して一歩一歩(一日一日)を確実に歩んでいく。適切なペース配分で疲弊(コロナ疲れ)を回避し、PPE着用の救急外来診療を日常のものとして(いい意味でのコロナ慣れ)、これが今日のER診療のスタンダードだととらえていくべきなのでしょう。


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