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COVID-19のおかげで目標達成?[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.51

加藤誠也 (結核予防会結核研究所所長)

登録日: 2021-01-02

最終更新日: 2020-12-22

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国は2016年に策定した「結核に関する特定感染症予防指針」において、2020年の到達目標として低まん延化(罹患率人口10万対10)の達成を掲げた。これは罹患率を毎年約7%減少させる意欲的な目標であった。

2019年の罹患率は同11.5であり、目標達成は13%の減少が必要であることから困難と思われる。ところが、2020年の結核サーベイランスの6月末までの月報によると、患者数は前年同時期に比べ13%減少し、年換算罹患率は9.5となり、目標を達成することになる。しかし、近年の罹患率減少が4~5%程度、高い年でも7.5%であったことを考慮すると下がりすぎである。COVID-19による影響が考えられる。

入国制限の影響で外国出生結核患者は減少しているが、この間の前年比の減少率は6%程度であり、主因ではない。三密の回避によって感染機会が減少しているが、成人では結核の感染から発症まで数カ月かかる場合が多く、2020年の上半期における低下は早すぎる。

主因は患者発見の停滞である。健康診断が4~5月は中止されたため健診発見が27%減少、保健所がCOVID-19のクラスター対策に大きな労力を割かざるをえなくなっていることから、接触者健診による発見が37%減少した。

有症状で医療機関を受診して発見された人が12%減少したのは、COVID-19感染の懸念から受診が抑制されているためと思われる。患者発見の遅れは、感染期間が長くなるために、感染拡大の原因になる。また、高齢者では発見の遅れは重症化・死亡の誘因になっており、死亡が増加する可能性もある。

COVID-19のまん延とそれに伴う社会活動の制限は、結核に限らず様々な疾患の病態や要因を介して、人々の健康に長期・短期の影響を与えているが、 COVID-19のみに関心が集中している懸念はないであろうか。COVID-19に関連する健康やQOLの情報を広い視点で共有して、必要な受診行動、疾患の適正な管理や健康維持のための活動等につながることが望まれる。

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