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難事率先[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.4

矢﨑義雄 (東京医科大学理事長)

登録日: 2021-01-01

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私の家は落語で有名な「芝浜」に出てくる芝神明町にあり、代々住んでいる生粋の江戸っ子で、「難事率先」の家訓があります。それは、困ったことあるいは困難なこと、すなわち難事があれば率先して自ら取り組む、それも半端でない本気で取り組むということです。

それを私も受け継ぎまして、今日まで多くの難事に取り組んできました。それは、東京大学での大学院重点化と診療科の再編という大改革を医学部長として果たしたことから始まり、その後いろいろな組織で「難事率先」を進めてきました。国立国際医療センターでは、救急の充実と診療陣の強化、さらには経営の改善により、都内最大規模の急性期総合病院として確立したことが所管する厚生労働省に認められ、病院が全面的に新築されました。さらに、当時巨額の負債と赤字を抱えた、全国150の国立病院を束ねる独立行政法人国立病院機構の運営を任され、職員の意識改革と政策医療の在り方を考え直すことにより、負債を半額に減じ、経営の黒字化という目標も達成しました。そして、国際医療福祉大学では、医師会、大学を含めた医療界および厚生労働省、文部科学省などの一斉の反対の中で、革新的な医学教育の実施、入学の門戸を広げるための低額な授業料の設定、そして留学生の受け入れなどによる国際化を内閣府に訴えて、38年ぶりの医学部の設置を果たすこともできました。

平成の終わりに、入試にまつわる不正で理事長、学長が起訴されるという、大学の存続が危ぶまれる重大事象に直面した東京医科大学から、今日まで多くの難事を解決してきた私の課題解決能力が見込まれて、事態の収拾と再生という大変な難事を託されました。

もとより東京医科大学は、恵まれた環境にあり、優れた潜在能力と人材を擁するきわめて優秀な大学です。学術面でも科学研究費の配分額は単科大学にもかかわらず高額を獲得しており、国際的な大学評価でも教育力が高く評価されています。そこで、学校法人の役員を全面的に刷新するとともに、大学運営の透明化、ガバナンスとコンプライアンスが適切に機能する体制の整備をしてきました。そして、入試の抜本的な改革をはじめとする再発防止策を真摯に実施しており、追加合格をはじめとする被害を受けた方々の救済措置も誠実に対応しているところです。まだ、道半ばですが、本学の精神である「自主自学」、校是である「正義・友愛・奉仕」をモットーに、努力する所存です。ご支援ください。

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