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脳画像解析の変遷[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.35

松田博史 (脳神経疾患研究所 南東北創薬・サイクロトロン研究センター院長)

登録日: 2020-12-31

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私が脳画像に本格的に興味を持ちはじめたのは1980年代前半の頃であった。その当時から、SPECTを用いた脳血流の断層像によりCTでは検出できない脳虚血を鋭敏にとらえることができるようになった。研究面では脳血流量の数値を算出する必要があり、日々、関心領域を脳画像に手動でトレースしていた。解剖の勉強にはなったが、膨大な時間を単調なトレーシングに費やしてしまった。

1990年代になると画期的な手法が発明された。個人の脳はそれぞれ形が違うので同じ関心領域を用いることはできない。そうであれば、個人の脳をすべて同じ形に変形してしまおうというものである。この手法は脳画像解析に飛躍的な発展をもたらした。私たちはこの手法をSPECTやPETに応用し、統計画像解析を研究面ばかりでなく日常診療レベルまでに応用した。今や、この手法は核医学画像だけではなく、MRIにも広く応用されている。私たちの開発したVSRADと呼ばれるMRIを用いて脳萎縮を検出するソフトウェアは医療機器として承認され、日本で広く用いられている。

2000年代に入ると、グラフ理論を応用して脳画像による脳内ネットワーク解析がコンピュータを用いて行われるようになった。さらに、この数年、脳画像解析に新たな潮流が起きている。人工知能を用いて、今まではほとんど不可能であった解析が実現している。たとえば、嗅内皮質や海馬の亜区域など、2 mLにも満たない脳構造の体積自動測定が可能となっている。一方では、MRIを用いて脳年齢を測定する手法が発展している。脳年齢は暦年齢よりも個人の生命予後に関連している。

また、教育、運動、瞑想などにより脳年齢を若く保つことができるとされ、脳年齢測定は生活習慣の見直しや、その見直し効果の判定にも役立つと注目されている。

私たちは現在の所属施設で行われている脳ドックにおいて、脳年齢測定の有用性を検証していく予定である。いつまで、脳画像解析の発展についていけるかわからないが、その発展を見届けたいと願っている。

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